企業セミナー

2025/12/04
企業セミナー

「陸・海・空の多様な輸送モードを活用したモーダルシフトによる 物流効率化セミナー」開催報告

 令和7年11月19 日(水)、福岡市において企業経営基盤強化等セミナー(「陸・海・空の多様な輸送モードを活用したモーダルシフトによる物流効率化セミナー」)を開催しました。
 本セミナーは、トラックドライバーの時間外労働上限規制の適用により顕在化した「2024 年問題」への継続的な対応と、カーボンニュートラルの実現に向けた物流の効率化・強靭化を目的として開催したもので、陸・海・空それぞれの輸送モードの特性を生かした連携の可能性を探る貴重な機会となりました。
 当日は、行政機関、荷主企業、物流企業、業界団体等から約160 名の参加を得て、各講演を通じて多様な視点からの情報提供と事例紹介が行われ、参加者の皆様にとって有意義な学びと気づきの場となりました。以下に開催概要及び講演内容の要旨を報告いたします。

           記
○ 日 時 令和7 年11 月19 日(水) 13:30 ~ 15:30
○ 会 場 オリエンタル福岡 博多ステーションホテル3 階「YAMAKASA」
○ 主 催 (公財)九州運輸振興センター、九州運輸局、九州トラック協会
○ 後 援 JR九州、九州地方倉庫業連合会、九州冷蔵倉庫協議会、九州冷凍事業協議会、九州長距離フェリー協議会
○ プログラム
<情報提供>
・JILS 調査から読み解く 物流2024 年問題の影響と取組の方向性
(公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会)
<各輸送モードの取組発表>
・海運モーダルシフトの活用について(国土交通省海事局内航課)
・貨物鉄道輸送の現状(日本貨物鉄道株式会社)
・モーダルシフトにおける航空輸送の活用(日本航空株式会社)

○ 講演内容の要旨
【情報提供】 JILS(公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会:三谷講師)
 物流業界が直面する「2024 年問題」について、制度改正の背景や長期的な影響が示され、2030 年度には最大34%の輸送力不足が懸念されるとの試算が共有されました。併せて、2025 年度物流コスト調査の速報結果として、売上高物流コスト比率が過去20年で4番目に高い水準(5.36%)に達したことが報告され、物流事業者のコスト上昇傾向が明らかになりました。
また、実態調査結果では、輸送費・荷役費・保管費など多くの項目でコスト増が見られ、特に人件費や燃料費の高騰、法令対応に伴うコスト転嫁が課題として浮き彫りになりました。こうした状況を踏まえ、官民連携による「物流革新に向けた政策パッケージ」
や、混載・中継拠点の活用などの先進事例が紹介され、持続可能な物流体制構築の方向性が示されました。

【各輸送モードの取組発表】
<海運モーダルシフトの活用について(国土交通省海事局内航課:勝山講師)>
 内航海運が国内貨物輸送の約4割を担う「必要不可欠なライフライン」であることが改めて強調されました。近年、荷主企業や物流事業者から「内航船の利用方法がわからない」「どこに相談すればよいかわからない」といった声が寄せられており、こうした課題に応える形で令和7 年5 月に「内航海運へのモーダルシフト利用ガイド」が策定されました。
講演では、船員の労働生産性向上、設備投資支援、フェリー・RORO 船の活用促進など、海上輸送力強化に向けた具体的施策が紹介され、モーダルシフトの受け皿としての海運の可能性が示されました。

<貨物鉄道輸送の現状(日本貨物鉄道株式会社:松尾講師)>
 鉄道貨物輸送は、従来よりモーダルシフトの有力な選択肢として位置づけられてきました。講演では、鉄道の「大量・安定・低環境負荷」という特性が改めて強調され、貨物列車1 編成でトラック65 台分の輸送が可能であること、CO₂排出量がトラックの1/11 に抑えられることなど、脱炭素社会の実現と2024 年問題への対応に資する輸送手段としての優位性が示されました。
また、九州地区における物流施設「レールゲート」の整備や、31ft コンテナの活用事例など、サプライチェーンの効率化に向けた取り組みが紹介されました。

<モーダルシフトにおける航空輸送の活用(日本航空株式会社:早田講師)>
 航空輸送は、これまでモーダルシフトの対象としては限定的な位置づけでしたが、近年の物流環境の変化を受けて、新たな選択肢として注目されていることが解説されました。講演では、航空輸送が「モーダルミックス」の一翼を担う可能性があること、定期便の空きスペースを活用することで省人化やCO₂排出削減に貢献できることが強調されました。
また、航空輸送のポテンシャルとして、1日あたり10トントラック約450台分に相当する輸送力を有していること、長距離・短時間輸送によって商品価値の向上や商圏の拡大が期待できることが紹介されました。福岡県から東京・豊洲市場への青果輸送事例では、トラック輸送に比べて18 時間の短縮と鮮度維持による販売価格向上が実現されたことが報告され、BCP(事業継続計画)対策としての有効性も示されました。
さらに、運賃の値差が縮まりつつあることから、航空輸送が経済的な選択肢となり得る点についても言及がありました。悪天候や自然災害による陸上・海上輸送網の寸断時においても、航空輸送は安定的な輸送手段として活用できる可能性があることが強調されました。

 当センターでは、今後も行政・業界団体との連携を通じて、物流課題の共有と理解促進に努めてまいります。
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