九州運輸コロキアム

2025/09/08
コロキアム

第66回九州運輸コロキアム 開催報告

 令和7年8月29日(金)、福岡市において第66回九州運輸コロキアムを開催しましたので、概要を報告いたします。
本コロキアムは、公益財団法人九州運輸振興センターが日本財団の支援・助成を受けて実施したもので、少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、持続可能な地域産業の維持・発展に向けた外国人材の活用をテーマに、制度の最新動向や現場での取り組みについて情報共有を行いました。

○ 日  時 令和7年8月29日(金) 13:30 ~ 15:30
○ 会  場 オリエンタルホテル福岡 博多ステーション 3階「YAMAKASA」
○ 主  催 公益財団法人 九州運輸振興センター
○ 後  援 JR九州、西日本鉄道㈱
○ プログラム
【開会挨拶】
公益財団法人九州運輸振興センター 理事/実行委員長 大黒 伊勢夫 氏
【講演1】
講 師:福岡出入国在留管理局 就労・永住審査部門 統括審査官 佐藤 聖樹 氏
テーマ:特定技能制度について
【講演2】
講 師:(公社)全日本トラック協会 常務理事 山﨑 寛 氏
テーマ:特定技能外国人ドライバーについて
【事例発表】
登壇者:㈱西鉄ホテルズ ソリューション本部人財マネジメント部長 河原 政志 氏
テーマ:外国人材と共に働く
~外国籍社員との“すれ違い”はなぜ起きる?現場で見つけた答え~
登壇者:西鉄エアサービス㈱ 代表取締役社長 木津 勇治 氏
テーマ:航空分野における外国人材活用事例について

<質疑応答・意見交換>

○ 参 加 者 運輸・観光事業  62名

【講演・事例紹介概要】
 佐藤統括審査官(福岡出入国在留管理局)からは、在留外国人数や在留資格、外国人労働者数の内訳、政府の基本方針、特定技能制度の対象分野、自動車運送業分野の制度概要、地域の共生施策との連携、受入れ機関と登録支援機関流の基準や義務、届出制度、育成就労制度の位置づけ、技能実習に関する経過措置のイメージ、特定技能制度の運用状況などについて体系的な説明があり、参加者にとって実務に直結する有益な情報提供となりました。

 山﨑常務理事(全日本トラック協会)からは、深刻化するドライバー不足への対応策として導入された特定技能制度について、導入の背景、全日本トラック協会の取組、受入事業者の要件、登録支援機関活用のポイント、特定技能1号評価試験の実施状況や、外国免許から国内免許への切替手続き(事前準備、流れ、取得後の留意点)、導入に伴う費用の目安など、実務面での留意点が具体的に示されました。また、制度運用を支える「自動車運送業分野特定技能協議会」の役割や、業界としての支援体制についても言及があり、制度の活用による持続可能な人材確保と業界全体の安定化への期待が示されました。

 河原部長(㈱西鉄ホテルズ)からは、「外国人材と共に働く」と題し、同社における外国籍人材活用の取り組みについて紹介がありました。事業展開と4ブランドの紹介に続き、外国籍社員の国別内訳や2000年以降の変遷が示され、2022年には海外サポート部を新設し、管理体制を強化。優秀な外国籍人材の長期就労や管理職登用も視野に、精度の高い支援体制を構築しています。2024年10月には自社で特定技能「登録支援機関」を取得。実務面では、帰属意識の違いや言語表現の曖昧さによるすれ違いを防ぐための対応を徹底しており、文化的背景への理解と、率直なコミュニケーションの重要性が提言されました。

 木津社長(西鉄エアサービス㈱)からは、航空分野における外国人材活用事例について紹介がありました。同社では特定技能1号により、2024年にフィリピン籍2名、2025年にインドネシア籍4名、さらに同年10月にフィリピン籍4名の採用を予定しており、在留資格や国籍別の社員構成も紹介されました。また、空港グランドハンドリング協会の調査結果をもとに、高度人材(技人国)資格を有した外国人材が活躍している一方で、特定技能制度を活用する事業者が増加傾向にあるとの報告がありました。その後、特定技能外国人材の受入れに必要な準備(求人票の作成から入社、運転免許取得等に至るまでのプロセスやスケジュール)、求められる日本語レベル、住居・生活備品等について具体的な説明がありました。導入にあたっては、十分な準備期間の確保、送り出し機関・国の選定に対する慎重な対応、社内窓口の整備、文化理解の重要性が強調されました。特定技能制度はコスト削減を目的とするものではなく、持続可能な人材確保の手段として捉えるべきとの提言がありました。

 会場参加者を交えた意見交換では、制度運用に関する具体的な質問や、地域における受入体制整備のあり方などについて活発な議論が行われました。特定技能制度の実務的課題や、社内体制の整備の必要性が共有され、特に、文化的背景の違いへの理解促進や、受入れ後の定着支援の重要性が強調されました。単なる人材確保に留まらず、持続可能な雇用環境の構築に向けた取り組みの必要性が改めて認識されました。

【センターより】
 運輸・観光分野では、少子高齢化による人手不足や訪日客の多様なニーズへの対応が課題となっており、外国人材の活用は現実的かつ重要な選択肢となっています。制度整備や支援策が進む中、単なる労働力としてではなく、共創の担い手としての外国人材の可能性が注目されています。
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