令和6年度「バリアフリー講習会in別府国際観光港」開催報告
令和6年12月11日(水)、日本財団の支援と助成を受け、別府市において九州運輸局との共催によりバリアフリー講習会を開催しましたので、その概要を報告致します。
〇開催日時:令和6年12月11日(水)9:30~12:30
〇開催場所:別府国際観光港 さんふらわあターミナルおよび同船内
〇対象者:大分県内の旅客航路事業に従事する従業員(職員)等
〇目的:講話および車いす・高齢者疑似体験を通して、バリアフリー及び介助等に対する理解を深め、助け合いの心を醸成する(心のバリアフリー 社会の形成)
〇主催:九州運輸局、公益財団法人九州運輸振興センター
〇協力:一般社団法人大分県介護福祉士会
公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団
特定非営利活動法人自立支援センターおおいた
株式会社商船三井さんふらわあ
大分県旅客船協会、大分県、別府市
〇プログラム(9:30~12:30)
・開講式(主催者挨拶等)
・座学(「旅客船事業者に求められること」)
講師:公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団 髙橋徹氏
特定非営利活動法人 自立支援センターおおいた 後藤秀和氏
・体験学習(「高齢者疑似体験学習および車いす体験学習」)
講師:一般社団法人大分県介護福祉士会 峯恵子氏、下田照美氏
・閉講式(体験者の感想・講評、質疑応答)
〇概要
高齢者、障害者等が安心して日常生活や社会生活を過ごせるようにするためには、施設整備(ハード面) だけではなく、高齢者、障害者等の困難を自らの問題として認識し、心のバリアを取り除き、社会参加に積極的に協力する「心のバリアフリー」の取組を広げることが重要となる。
そこで、当センターでは、日本財団の支援と助成を受け、九州運輸局との共催により、12月11日(水)、大分県別府市において、日頃、高齢者や障害者等と接する機会が多い大分県内旅客航路の乗組員や運航担当者等を対象に「バリアフリー講習会in別府国際観光港」を開催した。
昨年度に続き2年連続の開催となった。参加者31名は、「さんふらわあ ターミナル(別府)」及び「フェリーさんふらわあ むらさき」において座学と高齢者の疑似体験や車いす体験を通じ、高齢者や障害者の方との接し方・注意点などを学ぶとともに、令和6年4月から事業者に義務化された合理的配慮の提供の適切な対応に繋げるため、障害者差別解消法についての知識を深めた。
座学では、交通エコロジー・モビリティ財団の高橋徹氏から、「旅客船事業者に求められること」と題し、「エコモ財団の活動」ほか「バリアフリー法」や「障害者差別解消法」等について解説があった。
令和6年4月から事業者に障害のある人への合理的配慮の提供が義務付けされたが、合理的配慮の提供にあたっては、障害のある人と事業者等との間の「建設的対話」が重要であり、障害者を特別扱いすることではない。合理的配慮の原語は、Reasonable Accommodation(適切な調整)という意味であり、「我が事として考えること」が大事。対話を重ねながら相互理解を深め、共に対応案を検討していくことが求められる。
社会には様々な人がいるのは当たり前であり、障害の種類ではなく、その人が何に困っているかに着目することが大事。「多様性」や「障害」を理解することが重要であり、直接、障害当事者と関り、自分自身で体験することが最適な接遇・介助に繋がる。こうした研修を通じて正しい知識や技術を身につけ、必要なサポートが提供できるようになって欲しいとの期待が示された
続いて、NPO法人自立支援センターおおいたの後藤秀和理事長からは、ご自身の障害の特性や日常生活で不便を感じる場面、旅客船の利用状況や移動時に困っていること、注意していること、交通事業者の良かった対応、困った対応について紹介があり、バリアフリーを考える上で大切なこととして、当事者目線で考えること、接することが大事であり、本年4月より義務付けされた「合理的配慮の提供」についても、座学や視覚障害体験、車椅子介助体験、聴覚障害体験といった研修等を通じ、学習していくことが大事であるとアドバイスがあった。
障害者、高齢者及びその家族・友人等が、旅行や観光を諦めることなく、沢山の選択肢によって、自由に安心して出かけることができる社会づくりが、今後、大きなカギとなる。家族・友人の中に、当たり前に「障害者」「高齢者」がいる社会がきており、もしかすると自身が当事者になる可能性も。自分たちがやれることを真剣に考えていくことが大切と述べられ講話を締めくくられた。
体験学習では、一般社団法人大分県介護福祉士会の指導のもと、高齢者疑似体験用の装具を装着したり、車いすを使用して、ターミナル内や駐車場からターミナルへの移動などを体験したほか、フェリーターミナルからエレベーターやタラップを経由しての船内移動なども体験し、高齢者や車いす使用者等への対応にあたっては、接遇の前提として、高齢者や車いす使用者がどのようなバリアに困っているのか、それを取り除くために何をすべきか、など基本的な接遇の方法について学習した。
参加者からは、「移動にあたり、普段、段差や坂道をあまり気にするようなことはないが、高齢者や障害のある方にとっては、ほんのちょっとした段差でもバリアになるということがわかった」「この体験を今後の接客にも活かしていきたい」といったような感想が寄せられ、高齢者や障害のある方の特性を理解し、配慮のある接し方をするにはどうしたら良いのかなど、心のバリアフリーを考える貴重な機会となった。