令和5年度「バリアフリー講習会in宮崎港」開催のご報告
宮崎港にて旅客船の乗組員等を対象にバリアフリー講習会を3年連続で開催
(公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成を受け、九州運輸局との共催により12月6日(水)「バリアフリー講習会in 宮崎港」を開催した。
今回の講習会は、関西圏との旅客定期航路が開設され、南九州の玄関口として期待される「宮崎港フェリーターミナル」及び宮崎~神戸間を結ぶ航路に2022年4月に新たに投入された「フェリーたかちほ」において、同船に乗り組む船員や職員等22 名を対象に実施。同港での開催は、令和3年、令和4年に続き、3年連続。
講習会の開催にあたり、冒頭、九州運輸局宮崎運輸支局 古賀秀策支局長から、「宮崎県では、2027年に『国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会』の開催が予定されている。今後、宮崎県を訪れる多くの方々、特に、移動制約者のニーズにきめ細やかな対応を行うためには、旅客施設や車両等のハード面と、利用者に直接サービスを提供する乗組員や職員によるソフト面の一体的な対応が必要となる。本日の座学や車椅子及び高齢者の疑似体験学習を通じて、障害をもった方との接し方や手助けの方法などを学習し、今後の業務や、日常生活の中で役立てて欲しい」との挨拶があった。
開校式後の座学では、まず、エコモ財団高橋徹氏から、「旅客船事業者に求められること」と題して講話があった。旅客船においてバリアフリー化が進められる中、高齢者や障害者が、ハード面の設備拡充と併せ、より快適に安心して公共交通機関を利用していくためには、ソフト面の整備が不可欠。人間には男女差、年齢差、個人差があることから、「多様性」や「障害」を理解し、障害の種類ではなく、その人が何に困っているのかに着目することが重要。係員一人ひとりが研修を通じ、正しい知識や技術を身につけ、必要なサポートを提供することで、船やターミナル(ハード面)の障壁(バリア)を取り除き、誰もが快適に利用できる環境が整えられると解説された。
さらに、「接遇」と「介助」の違いや心構えなどについても触れられ、直接、障害当事者と関わり、自分自身で体験することが最適な接遇・介助につながる。そのためには介助を必要とする本人とコミュニケーションをとることが重要であると強調された。
また、特定非営利活動法人障害者自立応援センター「YAH!DO みやざき」の永山昌彦理事からは、ご本人の障害の特性や日常生活の状況、公共交通機関を利用する際に困っていることや交通事業者への期待等についての講話があった。
列車やバス、タクシーなどを利用する際、事前に予約をしなければならず、会議等が長引いてしまって乗れなくなったなどの事例を紹介。交通事業者への期待としては、駅やバス停、タクシー乗り場などで困っている高齢者や障害者等を見かけたら、まず、「何かお手伝いできることはありますか」と声かけをして欲しい。また、移動に制約のある方もさまざまであることから、それら当事者から話を聞いて、その障害の内容(特性)や程度等を理解して接して欲しい。声掛け一つで変わることから、是非、交通事業者にはそのような環境づくりをとのアドバイスがあった。
体験学習では、一般社団法人宮崎県介護福祉士会の指導のもと、参加者が二班に分かれ、二人一組になって、高齢者の疑似体験や車いすの利用体験をした。体に装具(おもり)をつけたままの状態で船内を移動したり、フェリーターミナルから船内までを車いすにのって、エレベーターやタラップを移動した。これらを通じ、高齢者や障害者の方が旅客船を利用する場合の身体的・心理的負担がどのようなものなのかを学習した。
参加者からは「貴重な体験ができて良かった。こうした経験を活かし、利用者の皆様が安心して乗れるような船にしていきたい」「当事者の立場にたって声かけをすることの重要性が理解できた」「日常生活の中でも声かけをしていきたい」などの感想が寄せられた。高齢者や障害者の困難を自らの問題として認識し、「心のバリアフリー」の取り組みを広げることの重要性をあらためて確認した。