九州運輸コロキアム

2024/12/23
コロキアム

第65回九州運輸コロキアム開催報告

 令和6年10月11日(金)、福岡市において第65回九州運輸コロキアムを開催しましたので、その概要を報告致します。

〇日時:令和6年10月11日(月) 13:30 ~ 15:30

〇会場:オリエンタルホテル福岡 博多ステーション 3階 YAMAKASA

〇主催:公益財団法人 九州運輸振興センター 
〇後援:JR九州

〇プログラム
基調講演 講師:中村学園大学大学院流通科学研究科 特任教授 星野裕志氏
テ-マ:「カーボンニュートラルに向けた九州の港湾対応」
事例発表1 講師:株式会社商船三井さんふらわあ 特別顧問 赤坂光次郎氏
テーマ:「脱炭素化へ向けた取り組みについて」
事例発表2 講師:東京九州フェリー株式会社 取締役営業部長兼新門司支店長 寺田光徳氏
テーマ:「海の高速道路〜モーダルシフトの受け皿に〜」

〇参加者 51名

〇開催概要
 基調講演では中村学園大学大学院流通科学研究科、特任教授の星野裕志様より、カーボンニュートラルに向けた取り組みの状況と九州の戦略等について講演いただきました。事例発表として、株式会社商船三井さんふらわあ特別顧問の赤坂光次郎様よりLNG燃料フェリーの導入の取り組み等について、また、東京九州フェリー株式会社取締役営業部長兼新門司支店長の寺田光徳様よりモーダルシフトに向けた長距離フェリーの役割や取り組みについてご講演いただきました。

【基調講演 星野講師: カーボンニュートラルに向けた九州の港湾対応】
 船舶も少なからず温室効果ガスを排出しており、地球規模の気候問題解決のため、「2050年国際海運のカーボンニュートラル」を目指し、海運各社が取り組みを始めている。しかし海運業界では新燃料への転換のあり方は各社がばらばらの動きをしており、足並みが揃っていない。現時点では多様かつ不透明な状況であるが、今後の趨勢をみながら九州域内の環境整備が求められることとなる。九州の国際競争力維持と向上には、カーボンニュートラルに向けた対応力強化が重要との問題意識が示された。
 国際競争力向上に資することが期待される九州域内の港湾には、「2050年国際海運のカーボンニュートラル」達成に向けた海運各社の取り組みに対して、次世代燃料への転換(燃料供給、備蓄、作業他)など適切な対応力強化のための環境整備が求められる。対応を誤ることによって、ポストパナマックスのコンテナ船が寄港先から外れるということと同様の事象が生じることが予想される。このようなことから、カーボンニュートラルは世界の潮流であるとともに、九州にとって重要な課題として認識される必要があるとの指摘があった。
 近況として、2024年問題で課題が露呈したトラック輸送から大量輸送機関である船舶や鉄道へのモーダルシフトが増えて来ている。働き方改革や環境問題への対応といった社会的課題を考えると、フェリー・内航船のカーボンニュートラルへの取り組みは不可避である。また、長距離輸送において、モーダルシフトに向けた新たな燃料供給や港湾オペレーションの変革は必須であり、船舶や港湾に限定しないサプライチェーン全体の対応が求められていると述べ、講演を締め括られました。

【事例発表1 赤坂講師: 脱炭素化へ向けた取り組みについて】
 商船三井グループが2050年までのネットゼロ・エミッション達成に向けた環境ビジョンについて触れ、脱炭素化に向けた取り組みとして、LNGほかメタノールやアンモニア、バイオディーゼル、電池、水素などの代替燃料船の開発、導入状況について報告があった。
 lNGについては、実用可能な低排出燃料との認識のもと積極的に活用しており、大阪〜別府を結ぶ大型LNG燃料フェリーを例にメリット、課題について説明された。
LNG燃料フェリーのメリットとしては、環境性能が抜群で、ほぼ無臭・無色の排気であること、燃焼生成物が少ないといった点が挙げられるが、その一方で、導入や運航でのコストが高く、船員の技能取得や船舶への燃料供給面での課題がある。燃料供給については、現在、Truck to Ship方式であるが、燃料供給の頻度や燃料補給作業に従事する者には資格が必要といった点なども考慮し、将来的にはLNGバンカリング船を利用したShip to Ship方式への変更を検討している。
 また、運送業界のカーボンニュートラルを考えた時にLNG燃料フェリー利用によるCO2削減効果は大きいことから、大洗~苫小牧航路に2隻投入予定。これらの船舶には推進効率を高めた高性能エンジンや省エネ装置などの新技術を採用、トラックの積載台数も増加となる。低速エンジンとすることで低燃費となり、深夜便として就航し、物流中心の船となる。フェリーの利用は脱炭素、2024年問題への解決策として有効であり、フェリーのシェアがこれからますます拡大していくものと予想される。
 商船三井グループでは今後も脱炭素、低炭素化実現に向けたクリーン代替燃料の導入を推進していきたいと述べられました。

【事例発表2 寺田講師:海の高速道路〜モーダルシフトの受け皿に〜】
 本年3月まで猶予されていた「働き方改革関連法」の自動車運転業務への適用が4月に開始されたことを受け、2024年問題のポイントや改善基準告示の内容、ドライバーの現状について説明があった。時間外運行の減少や物流コストの上昇がドライバー、運行会社、荷主に及ぼす影響について解説された。              
 2024年問題への社会的注目が高まる中、こうした課題を解決するための方策の一つとして海上モーダルシフトが進んでいる。長距離フェリーを活用することのメリットとして、有人車航送の場合、フェリーの乗船時間は休息時間として取り扱うことができる。また、定時性に優れており、事故や渋滞に巻き込まれることがなく、事故率の低下にも繋がるといった点について紹介があった。
 無人車航送の場合では、トラックドライバーの賃金、燃料費、高速道路の利用料が削減でき経済合理性で優位である。軽トラックから大型トレーラなど様々な種類の車両の積載が可能であり、荷崩れ・荷痛みも少なく輸送品質の面でも優れている。環境問題が地球規模の課題となる中、海上輸送への転換は、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みであり、長距離フェリーは地球環境にやさしい輸送機関と言える。さらに、大規模な自然災害が発生した際の代替輸送機関としても役割も担うことができる。
 今後もモーダルシフトの受け皿としての役割をしっかりと果たしながら環境問題に取り組んでいくと述べられました。   

 気候変動問題への対応が全産業的に求められる中、海事・海運分野におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みは重要です。今後もこうしたコロキアムやセミナー等の機会を通じ、海運、物流、造船・舶用などの事業者はもとより、カーボンニュートラルの実現に向け取り組みを進めておられる方々にとりまして、参考となるような情報を提供して参ります。
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