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「物流2024年問題を振り返る」 〜九州・山口地域における物流の現状と課題〜      開催のご案内
2025/02/21

   「物流2024年問題を振り返る」 〜九州・山口地域における物流の現状と課題〜開催のご案内

 この度、(公財)九州運輸振興センターでは、(公社)日本ロジスティクスシステム協会との共催により、「物流2024年問題を振り返る〜九州・山口地域における物流の現状と課題〜」を下記により開催することとなりました。
 本セミナーでは、講演と企業事例を通して、「物流関連二法の改正」が、荷主企業、物流事業者にどう影響を及ぼすのか、また、九州・山口地域における物流の現状と課題等の情報提供を行い、今後これらの変化にどのように対応すべきかを考えるきっかけになればと考えています。ご関心をお持ちの皆様には、ぜひご参加をいただきますようご案内申し上げます。

   1)開催日時:2025年3月4日(火) 13:00〜16:00
   2)開催形式:会場参加、オンライン参加選択形式
          会場:リファレンス駅東ビル 5階(福岡市博多区:博多駅筑紫口 徒歩4分)
          オンライン:Zoom
   3)参加定員:200名(会場・オンライン合計)
   4)参加対象:発・着両荷主企業経営者層・物流担当、物流事業者の経営者層・管理者層 など
   5)参加料:無料
   6)講演:「物流2024年問題への対応にむけて」
        神戸大学大学院 国際海事研究センター リサーチフェロー
        (元)サンスターグループ ロジスティクス研究室 室長)荒木 協和 氏
     企業事例@:「荷主企業における2024年問題対応と九州・山口地域への物流の現状と課題」
           エレコム株式会社 物流部 スーパーバイザー 原田 航 氏(オンライン予定)
     企業事例A:「物流事業者における2024年問題対応と九州・山口地域における物流の現状と課題」
           SBS東芝ロジスティクス株式会社 業務部 合理化推進担当 参事 須永 理 氏

  【セミナーの概要、申込みは下記のURL
   (日本ロジスティクスシステム協会の本セミナー情報のページ)よりお願いします】
    ↓↓↓
   https://www1.logistics.or.jp/network/M07.html








令和7年新春経営セミナー開催報告
2025/02/04

                    令和7年新春経営セミナー開催報告

 (公社)熊本県トラック協会との共催による「令和7年新春経営セミナー」を、令和7年1月24日、熊本市において開催しましたので、その概要を報告致します。

     〇日  時 : 令和7年1月24日(金) 15:00 〜 17:40
     〇会  場 : ホテル日航熊本 5階 阿蘇
     〇講 演T : (講 師)公正取引委員会事務総局九州事務所 下請取引調査官 梅木俊明 氏
              (テーマ)労務費の適切な転嫁
     〇講 演U : (講 師)ジャーナリスト 後藤謙次 氏
              (テーマ)これからの政治のゆくえ
     〇参 加 者 : 約150名

 講演に先立ち、(公社)熊本県トラック協会 田上明仁副会長兼経営改善委員長((有)青井運送代表取締役)と当センターの大黒伊勢夫理事・講演会等実行委員長((一財)国際観光ビジネス協会理事)が主催者挨拶を行い、次いで、来賓の原田修吾九州運輸局長様より来賓挨拶を頂戴した。

【講演概要:講演T「労務費の適切な転嫁」】 
 労務費や原材料価格、エネルギーコストの上昇が続く中、原材料価格やエネルギーコストの価格転嫁は比較的進んでいると思われるが、労務費の転嫁はあまり進んでいない。原材料価格やエネルギーコストのみならず、賃上げ原資の確保を含めて、適切な価格転嫁による適正な価格設定をサプライチェーン全体で定着させることが極めて重要。このため、公正取引委員会では、令和5年11月29日、内閣官房と連名で「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を策定・公表した。
 この指針は、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のうち、労務費の転嫁にかかる価格交渉について、発注者及び受注者が採るべき行動/求められる行動を12の行動指針として、取りまとめたもの。
 これら12の行動指針に沿わないような行為をすることで、公正な競争を阻害する恐れがある場合には、公正取引委員会において、独占禁止法及び下請代金法に基づき厳正に対処する。   
 他方で、記載された発注者としての行動を全て適切に行っている場合、通常は独占禁止法及び下請代金法上の問題は生じないと考える。
 その後、それぞれの指針に該当する取組事例のほか、受注者が用いている根拠資料や取組内容について、事業者からの指摘事項なども交え、12の指針について解説があった。

【講演概要:講演U「これからの政治のゆくえ」】
 石破政権の誕生からそれ以降の政治の動きについて、国内の政治情勢や第2期トランプ政権との向き合い方のほか2025年度予算の成立や夏の参議院選挙区に向けた政権運営の見通しなど、新聞等では報道されない裏話などもあり、参加者は興味深く聞き入っていた。

 
 物流の革新と持続的成長に向けた取り組みが政府一丸となって進められる中、本講演は国の施策やその実現に大きく関係する国の政治に関してのテーマ、内容となった。トラック運送事業者や倉庫事業者といった物流事業者をはじめ荷主や行政機関の方の参加もあり、非常に有意義な講演会となった。





令和7年新春経営セミナーのご案内
2024/12/24

                  令和7年新春経営セミナーのご案内

 この度、(公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成を受け、(公社)熊本県トラック協会との共催により「令和7年新春経営セミナー」を下記により開催することとなりました。
 物流は、国民生活・経済を支える社会インフラです。物流産業を魅力あるものとするため、働き方改革に関する法律が本年4月から適用される一方、物流の停滞が懸念される「2024年問題」に直面しています。
 こうした状況に対応するため、荷主企業、物流事業者、一般消費者が協力して我が国の物流を支えるための環境整備に向けた取り組みが進められています。
 本セミナーでは、公正取引委員会事務総局九州事務所の担当官から「労務費の適切な転嫁」について、また、ジャーナリストの後藤謙次様から「これからの政治のゆくえ」と題して、ご講演いただきます。
 いずれも関係の皆様には大いに関心をお持ちいただけるテーマとなっており、今後の事業展開の参考になるものと思っております。
 業務多忙の折、大変恐縮に存じますが、多くの皆様にご参加いただきますようお願い申し上げます。
 なお、会場の都合等がございますので、ご参加の申し込みは令和7年1月17日(金)までに下記要領にてお願いいたします。

                    記
  1 日 時 令和7年1月24 日(金) 15:00〜17:40(14:00 受付開始)
  2 会 場 ホテル日航熊本 5 階「阿蘇」 熊本県熊本市中央区上通2-1
  3 講演・スケジュール
       開会挨拶(熊本県トラック協会)
       主催者挨拶(九州運輸振興センター)
       来賓挨拶
       講演T 講 師:公正取引委員会事務総局九州事務所 担当官
          テーマ: 「労務費の適切な転嫁」
       講演U 講 師:ジャーナリスト 後藤 謙次 氏
          テーマ: 「これからの政治のゆくえ」
       閉会挨拶(熊本県トラック協会)
  4 申 込 令和7年1月17日(金)までに、お電話をいただくか、または当センターホームページのお問合せ
       フォームにて、通信欄に「セミナー参加希望」と明記して、会社名・住所・電話番号・参加される
       方の役職名及びお名前を記入の上、お申込み下さい。※定員150 名
  5 参加費 当センター賛助会員のセミナー受講は無料。会員以外で参加を希望される方は、
       (公社)熊本県トラック協会事務局(096-369-3968)までお問い合わせください。





令和6年度 冷凍コンテナの引渡し式について
2024/12/23

                 離島航路で使用する冷凍コンテナを提供しました

 (公財)九州運輸振興センターは、令和6年度事業として鹿児島県内の離島航路で使用する冷凍コンテナ10個を製作、離島航路事業者5社へ提供し、12月11日に鹿児島新港旅客ターミナル(鹿児島市)において引渡し式を行いました。
 日本財団の離島活性化活動と連携した取り組みで、同財団の支援と助成を受けており、当日はセンターの竹永健二郎理事長、離島航路事業者の代表者等、関係者約30名が参加しました。

 冷凍コンテナは、離島住民への生鮮食品や冷凍・冷蔵品の安心・安全な輸送の為に不可欠なものとなっており、この取り組みは離島航路の持続的な運営確保を支援することにつながっています。

 引渡式には、野元雅幸国土交通省九州運輸局鹿児島運輸支局長ほか来賓に迎え、竹永理事長から「日本財団の支援と多大な助成により製作した冷凍コンテナが離島における食料の保管や輸送サービスの質の向上等に少しでもお役に立てれば幸いです。末永く大切に使ってほしい」などの挨拶に続き、関係航路5社の代表者へ目録が手渡されました。

 引渡しを受けた航路事業者を代表してマリックスライン滑竰j直哉社長から「冷凍コンテナは、新鮮な食材や生活物資を確実に安心、安全に離島へ輸送する機材として重要であり、こうした支援は非常に有難い。提供して頂いた(公財)九州運輸振興センターと、これに助成を頂いた日本財団には大変感謝している。永く大切に使用させていただく」との謝辞がありました。

 引渡し後、ターミナル横に整列した真新しい冷凍コンテナの見学では、、製作メーカーの
担当者から機能や利用方法などの説明が行われ、関係者は熱心に聞き入っていました。





令和6年度「バリアフリー講習会in別府国際観光港」開催報告
2024/12/23

              「バリアフリー講習会in別府国際観光港」開催報告

 令和6年12月11日(水)、日本財団の支援と助成を受け、別府市において九州運輸局との共催によりバリアフリー講習会を開催しましたので、その概要を報告致します。

 〇 開催日時:令和6年12月11日(水) 9:30〜12:30
 〇 開催場所:別府国際観光港 さんふらわあターミナルおよび同船内
 〇 対 象 者:大分県内の旅客航路事業に従事する従業員(職員)等
 〇 目  的:講話および車いす・高齢者疑似体験を通して、バリアフリー及び介助等に対する
        理解を深め、助け合いの心を醸成する(心のバリアフリー 社会の形成)
 〇 主  催:九州運輸局、公益財団法人九州運輸振興センター
 〇 協  力:一般社団法人大分県介護福祉士会
        公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団
        特定非営利活動法人自立支援センターおおいた
        株式会社商船三井さんふらわあ
        大分県旅客船協会、大分県、別府市
 〇 プログラム(9:30〜12:30)
        ・開講式(主催者挨拶等)
        ・座学(「旅客船事業者に求められること」)
         講師:公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団 橋徹氏
         特定非営利活動法人 自立支援センターおおいた 後藤秀和氏
        ・体験学習(「高齢者疑似体験学習および車いす体験学習」)
         講師:一般社団法人大分県介護福祉士会 峯恵子氏、下田照美氏
        ・閉講式(体験者の感想・講評、質疑応答)

〇 概要
 高齢者、障害者等が安心して日常生活や社会生活を過ごせるようにするためには、施設整備(ハード面) だけではなく、高齢者、障害者等の困難を自らの問題として認識し、心のバリアを取り除き、社会参加に積極的に協力する「心のバリアフリー」の取組を広げることが重要となる。
 そこで、当センターでは、日本財団の支援と助成を受け、九州運輸局との共催により、12月11日(水)、大分県別府市において、日頃、高齢者や障害者等と接する機会が多い大分県内旅客航路の乗組員や運航担当者等を対象に「バリアフリー講習会in別府国際観光港」を開催した。

 昨年度に続き2年連続の開催となった。参加者31名は、「さんふらわあ ターミナル(別府)」及び「フェリーさんふらわあ むらさき」において座学と高齢者の疑似体験や車いす体験を通じ、高齢者や障害者の方との接し方・注意点などを学ぶとともに、令和6年4月から事業者に義務化された合理的配慮の提供の適切な対応に繋げるため、障害者差別解消法についての知識を深めた。

 座学では、交通エコロジー・モビリティ財団の高橋徹氏から、「旅客船事業者に求められること」と題し、「エコモ財団の活動」ほか「バリアフリー法」や「障害者差別解消法」等について解説があった。  
 令和6年4月から事業者に障害のある人への合理的配慮の提供が義務付けされたが、合理的配慮の提供にあたっては、障害のある人と事業者等との間の「建設的対話」が重要であり、障害者を特別扱いすることではない。合理的配慮の原語は、Reasonable Accommodation(適切な調整)という意味であり、「我が事として考えること」が大事。対話を重ねながら相互理解を深め、共に対応案を検討していくことが求められる。
 社会には様々な人がいるのは当たり前であり、障害の種類ではなく、その人が何に困っているかに着目することが大事。「多様性」や「障害」を理解することが重要であり、直接、障害当事者と関り、自分自身で体験することが最適な接遇・介助に繋がる。こうした研修を通じて正しい知識や技術を身につけ、必要なサポートが提供できるようになって欲しいとの期待が示された

 続いて、NPO法人自立支援センターおおいたの後藤秀和理事長からは、ご自身の障害の特性や日常生活で不便を感じる場面、旅客船の利用状況や移動時に困っていること、注意していること、交通事業者の良かった対応、困った対応について紹介があり、バリアフリーを考える上で大切なこととして、当事者目線で考えること、接することが大事であり、本年4月より義務付けされた「合理的配慮の提供」についても、座学や視覚障害体験、車椅子介助体験、聴覚障害体験といった研修等を通じ、学習していくことが大事であるとアドバイスがあった。

 障害者、高齢者及びその家族・友人等が、旅行や観光を諦めることなく、沢山の選択肢によって、自由に安心して出かけることができる社会づくりが、今後、大きなカギとなる。家族・友人の中に、当たり前に「障害者」「高齢者」がいる社会がきており、もしかすると自身が当事者になる可能性も。自分たちがやれることを真剣に考えていくことが大切と述べられ講話を締めくくられた。

 体験学習では、一般社団法人大分県介護福祉士会の指導のもと、高齢者疑似体験用の装具を装着したり、車いすを使用して、ターミナル内や駐車場からターミナルへの移動などを体験したほか、フェリーターミナルからエレベーターやタラップを経由しての船内移動なども体験し、高齢者や車いす使用者等への対応にあたっては、接遇の前提として、高齢者や車いす使用者がどのようなバリアに困っているのか、それを取り除くために何をすべきか、など基本的な接遇の方法について学習した。

 参加者からは、「移動にあたり、普段、段差や坂道をあまり気にするようなことはないが、高齢者や障害のある方にとっては、ほんのちょっとした段差でもバリアになるということがわかった」「この体験を今後の接客にも活かしていきたい」といったような感想が寄せられ、高齢者や障害のある方の特性を理解し、配慮のある接し方をするにはどうしたら良いのかなど、心のバリアフリーを考える貴重な機会となった。





企業経営基盤強化等セミナー開催報告
2024/12/23

                 企業経営基盤強化等セミナー開催報告

 令和6 年11 月20 日(水)、福岡市において企業経営基盤強化等セミナー(「物流効率化促進セミナー」)を開催しましたので、その概要を報告致します。

  〇 日 時 令和6 年11 月20 日(水) 13:30 〜 16:00
  〇 会 場 オリエンタル福岡 博多ステーションホテル3 階 YAMAKASA
  〇 主 催 (公財)九州運輸振興センター、九州運輸局、九州トラック協会
  〇 後 援 JR九州、九州地方倉庫業連合会、九州冷蔵倉庫協議会、九州冷凍事業協議会、
       九州長距離フェリー協議会
  〇 プログラム(講演のみ)
  第1部:物流を取り巻く現状について(60 分)
     ・テーマ 2024 年を「物流革新元年」に
     ・講 師 国土交通省 物流・自動車局 物流政策課長 紺野博行氏
     ・テーマ 九州の物流の現状
     ・講 師 九州運輸局 自動車交通部 貨物課長 東祐樹氏
  第2部:事例紹介(60 分)
     ・テーマ バース予約・受付システムの開発・導入による物流効率化
     ・講 師 福岡運輸 業務推進部 システム課長 生津瑠美氏
     ・テーマ 物流効率化の取組
     ・講 師 潟}キタ運輸 取締役 東良二氏
     ・テーマ 集荷&モーダルシフトの取組事例
     ・講 師 日本通運兜汢ェ海運支店 博多港支店 内田紘史氏
  〇 参 加 者 約150 名

  〇 概 要

【第1部:物流を取り巻く現状について】
<2024 年を「物流革新元年」に>
 物流業界の現状として、事業規模を令和3 年度の統計でみると、主要な業種の営業収入の合計は約29 兆円、従業員数は約223 万人で、全産業比に占める物流の割合は、それぞれ2%、3%。トラック運送業を含め物流企業の多くは中小企業率が高い。トラックドライバーの働き方をめぐる現状として、年間労働時間は、全産業として比較して約2割長く、年間所得額は約1 割低いが有効求人率は約2 倍高い。ドライバーの人手不足が深刻であり、長時間労働が常態化している。トラックドライバーの長時間労働の主な要因としては、長時間の運転時間、荷待ち時間、荷役作業等が挙げられる。こうしたことから平成30 年改正の「働き方改革関連法」に基づき、時間外労働時間規制について、見直されることとなった。
 労働時間規制等による物流への影響は大きく、何も対策を講じなければ物流の停滞が生じかねないという物流の「2024 年問題」に直面している。
 この間の物流政策の動きとして、昨年6 月に、@物流の効率化、A商慣行の見直し、B荷主・消費者の行動変容を柱とする抜本的・総合的な対策を取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」が決定され、また2023 年10 月には、可能な施策の前倒しを図るべく「物流緊急パッケージ」が取りまとめられた。
 さらに、本年2 月には、両パッケージに基づき、中長期的な対策として、物流の適正化・生産性向上をさらに進めるため「2030 年度に向けた政府の中長期計画」が策定・公表された。
 物流の「2024 年問題」は、当該時点を乗り越えれば終わる一過性の課題ではなく、年々深刻化する構造的な課題でもある。2030 年には輸送力が34%減少すると予測されるため継続的に対応していく必要がある。また、中長期計画については毎年度フォローアップを行い、次期の総合物流施策大綱を閣議決定するタイミングと合わせて見直すこととしている。
 このため、令和7 年度予算の概算要求において、2030 年に向けた関係予算を計上するとともに、改正物効法・トラック法の円滑な施行に向け準備を進めている。2024 年は、物流事業者、荷主企業、一般消費者が協力し、物流革新の実現に向けて始動する重要な1年である。

<九州の物流の現状>
 物流業界においては、本年4 月から時間外労働の上限規制が適用となり、物流の停滞が懸念される物流の「2024 年問題」への対応が喫緊の課題となっている。九州管内の物流の影響を把握するため、物流事業者(トラック事業、海運業、倉庫業、鉄道事業)を対象に、令和6 年10 月10 日から11 月1 日にかけてWEB 方式でアンケート調査を実施。2024 年以降の物流の影響、荷主との運賃等の交渉の有無、各社の取り組み状況等について、調査票送付事業者数6,893 社中、1,176 件の回答があった。
 「2024 年問題」による物流への影響については、70%以上が感じていると回答。2024年問題により影響が出ている事項としては、「営業収入の減少」「荷主との交渉の発生」と回答した数が何れも550 件を超え、約半数の事業者に発生。労働者の離職が増加したとの回答も367 件となった。また、「2024 年問題」により、労働力不足を感じるかとの設問では、70%以上が感じていると回答。さらに、荷主との運賃交渉等の有無については、80%以上の事業者が荷主との交渉を実施し、その内容については、運賃・料金、附帯作業、保管料金等の値上げに関するものが殆ど。運賃値上げ等に対する荷主の理解度について、理解いただいているとの回答は50%弱、理解いただいていないとの回答が18%弱という結果を見ると、物流事業者への理解はある程度進んでいると考えられる。
 また、令和2 年4 月に告示された標準的運賃の浸透、活用状況等の実態を把握することを目的に全日本トラック協会の会員事業者約2000 社を対象に令和6 年1 月22 日から3 月10 日にかけて実施した実態調査結果についても紹介があった。標準的運賃を提示又は考慮した自社運賃の提示、具体的な値上げ額や値上げ率を提示して運賃交渉を実施した事業者が71%。その内「希望額を収受できた」との回答と「一部収受できた」との回答を合わせ75%となったが、今後も引き続きトラック・物流G メン等の制度を通じて、荷主に対し、理解を促していくことが必要。

【第2部:事例紹介】
<バース予約・受付システムの開発・導入による物流効率化>
 運送業においては、人手不足、長時間労働、高い離職率、労働生産性の低さといった従来からの課題に加え、働き方改革や環境問題への対応が求められている。
 経営ビジョンとして「物流×テクノロジーでデジタル時代の新たなイノベーションを創出する」を掲げ、これまで属人化していた業務を、プロセスの標準化や省人化、自動化を図り、発生する情報を可視化や共有化することで、業務を変革できるような仕組作り・場の創出に取り組んでいる。
 そうした取り組みの一つとして、令和元年よりバース予約・受付システムの稼働を開始した。当社バースの特徴として、1つのバースを時間帯毎にTC(Transfer Center:在庫を補完しないタイプの物流センター)・DC(Distribution Center:商品の在庫を保管管理した上で、各納品場所へ出荷するタイプの物流センター)で共用していることが挙げられる。
 システム導入前までは、アナログツール・人を介した情報のやり取り・状況確認・バース
運営を行っていた。そのため、構内外での車両混雑、待機時間の長期化、倉庫内での作業率低下といったような稼働上の問題と共に、運用においても受付やバース稼働状況の把握が煩雑、人への依存度が高く業務付加が大きいなど様々な問題点があった。
 これらの課題を解決するためドライバーや作業員、配車担当者にヒアリングを行い、TC/DC に対応可能な自社独自のシステム「バース予約・受付システム」を開発・導入した。
これにより、問い合わせや呼び出し作業の削減効果は年間で8,000 時間となった。バース状況の可視化・共有化、オペレーションの省力化、バース運営の効率化・最適化が図られ、データの分析や活用環境の整備にも役立っている。
 開発におけるポイントでは、問題を細分化して取り組む、システムを素早く作る、日々の業務をする中で改修・改善を行いブラッシュアップする。さらには、業務の効率化、全体最適化につながること、つなげることを前提に開発を進め、AI なども活用して、業務や時代、環境の変化にも柔軟に対応することが挙げられる。
 今後も業務のデジタル化を進め、関係するシステム間でのデータ連携や利活用を図り、ボトルネックの解消や物流全体の最適化を進めていきたい。

<物流効率化の取組>
 長距離輸送が多いことから、宮崎、神奈川、大阪、福岡、鹿児島に物流拠点の整備を進め、ドライバーの宿泊休憩所を設置し、休息できる場所を確保。2024 年問題への対応としての拠点整備は終了。
 温度管理が必要となる商品について、関東・関西エリアの消費地へはカーフェリー・RORO 船を積極的に利用。これによりドライバーの休息時間を確保し、改善基準にも対応できている。宮崎発の関西エリア以東は全てフェリーを利用することで、環境負荷の低減、ドライバーの長距離運行の抑制を実現。しかし、南九州発の荷物は生鮮食品(農畜産物・乳製品)など、賞味期限が短く、輸送で欠車出来ない商品が多いので、ドック入りや台風等による欠航に備え陸送体制も構築している。
 当社の運行は混載便が大半を占め、貸切便が殆どない。そのため、2 次配送拠点を活用し、小口化している荷物の中継輸送を行っている。
 生産性向上に向けた取り組みの1 つ目、各拠点のパレット交換機を使用し、工場専用パレット・マキタ専用パレットからレンタルパレットや配送先指定のパレットに交換したことで、積作業時間を80%削減することができた。
 2つ目、運送業界を取り巻く環境は、人員の減少、高齢化傾向にあることから、約86tの商品を輸送するケースにおいて、2 段枠を使用し、10t車からトレーラー車へ変更したことで、1 日あたりの必要人員を66.7%削減できた。
 3つ目、トラックへの積載にあたり、2 段枠を使用することで1 パレット分の面積で2パレット分の積載が可能となり、ブロイラーの運搬のケースでは、1車あたり36 パレット積み込むことが可能となり、車両削減率約50%を達成できた。また、高積みによる潰れやドリップ漏れなどが減少し、商品の品質を落とさず、効率的な輸送が可能になった。

<集荷&モーダルシフトの取組事例>
 当社の内航船輸送は、「九州〜東京航路」に2 隻、「東京〜北海道航路」に3 隻の合計5隻で運航。特徴としては、車輌が直接船倉に入るRO/RO方式であり、貨物積み下ろしスピードが早い、車輌直積であるため振動が少ない、特殊車両の輸送にも対応できるといったことが挙げられる。
 輸送機材としては、1.1×1.1 パレットが22PL 積載可能な13mウイングトレーラーほか、当社独自の中ロットの海上輸送に適した12Fコンテナ(1.1×1.1 パレットが6PL 積載可能)、Sea&Rail サービス(海上輸送と鉄道輸送の複合一貫輸送)に適した12FのRSVコンテ、冷蔵・冷凍対応の20Fリーファコンテナがある。
 自社で運航する以外にも利用運送という形で九州エリアや沖縄エリアを発着する他社航路を活用しての輸送にも関与している。
 海上輸送へモーダルシフトすることで、ドライバー不足への対応のほか、環境配慮型物流の実現に貢献でき、物流の効率化、長距離輸送コストの削減にも寄与できる。
 このようなことで、トラック輸送から海上輸送へ切り替えた、CO2 の削減に貢献する海上輸送を企業のイメージアップのために利用してもらえた、輸送コスト低減の観点から利用してもらえたなどの事例がみられる。2024年問題への対応も含め、今後もモーダルシフトの取り組みを進めていきたい。


 トラックドライバーに労働時間の上限規制が適用された2024 年4 月から8 か月が経過しようとしている中、荷待ち・荷役の削減、積載率向上、モーダルシフト等の取り組みが進められています。本日のセミナーが、2024 年問題をはじめとする物流の課題解決のヒントになれば幸いです。





第65回九州運輸コロキアム開催報告
2024/12/23

                第65回九州運輸コロキアム開催報告

 令和6年10月11日(金)、福岡市において第65回九州運輸コロキアムを開催しましたので、その概要を報告致します。

  〇 日 時 令和6年10月11日(月) 13:30 〜 15:30
  〇 会 場 オリエンタルホテル福岡 博多ステーション 3階 YAMAKASA
  〇 主 催 公益財団法人 九州運輸振興センター 
  〇 後 援 JR九州
  〇 プログラム
    基調講演  講 師:中村学園大学大学院流通科学研究科 特任教授 星野裕志氏
          テ−マ:「カーボンニュートラルに向けた九州の港湾対応」
    事例発表1  講 師:株式会社商船三井さんふらわあ 特別顧問 赤坂光次郎氏
          テーマ:「脱炭素化へ向けた取り組みについて」
    事例発表2 講 師:東京九州フェリー株式会社 取締役営業部長兼新門司支店長 寺田光徳氏
          テーマ:「海の高速道路〜モーダルシフトの受け皿に〜」

  〇 参 加 者 51名

  〇 開催概要
 基調講演では中村学園大学大学院流通科学研究科、特任教授の星野裕志様より、カーボンニュートラルに向けた取り組みの状況と九州の戦略等について講演いただきました。事例発表として、株式会社商船三井さんふらわあ特別顧問の赤坂光次郎様よりLNG燃料フェリーの導入の取り組み等について、また、東京九州フェリー株式会社取締役営業部長兼新門司支店長の寺田光徳様よりモーダルシフトに向けた長距離フェリーの役割や取り組みについてご講演いただきました。


【基調講演 星野講師: カーボンニュートラルに向けた九州の港湾対応】
 船舶も少なからず温室効果ガスを排出しており、地球規模の気候問題解決のため、「2050年国際海運のカーボンニュートラル」を目指し、海運各社が取り組みを始めている。しかし海運業界では新燃料への転換のあり方は各社がばらばらの動きをしており、足並みが揃っていない。現時点では多様かつ不透明な状況であるが、今後の趨勢をみながら九州域内の環境整備が求められることとなる。九州の国際競争力維持と向上には、カーボンニュートラルに向けた対応力強化が重要との問題意識が示された。
 国際競争力向上に資することが期待される九州域内の港湾には、「2050年国際海運のカーボンニュートラル」達成に向けた海運各社の取り組みに対して、次世代燃料への転換(燃料供給、備蓄、作業他)など適切な対応力強化のための環境整備が求められる。対応を誤ることによって、ポストパナマックスのコンテナ船が寄港先から外れるということと同様の事象が生じることが予想される。このようなことから、カーボンニュートラルは世界の潮流であるとともに、九州にとって重要な課題として認識される必要があるとの指摘があった。
 近況として、2024年問題で課題が露呈したトラック輸送から大量輸送機関である船舶や鉄道へのモーダルシフトが増えて来ている。働き方改革や環境問題への対応といった社会的課題を考えると、フェリー・内航船のカーボンニュートラルへの取り組みは不可避である。また、長距離輸送において、モーダルシフトに向けた新たな燃料供給や港湾オペレーションの変革は必須であり、船舶や港湾に限定しないサプライチェーン全体の対応が求められていると述べ、講演を締め括られました。

【事例発表1 赤坂講師: 脱炭素化へ向けた取り組みについて】
 商船三井グループが2050年までのネットゼロ・エミッション達成に向けた環境ビジョンについて触れ、脱炭素化に向けた取り組みとして、LNGほかメタノールやアンモニア、バイオディーゼル、電池、水素などの代替燃料船の開発、導入状況について報告があった。
 lNGについては、実用可能な低排出燃料との認識のもと積極的に活用しており、大阪〜別府を結ぶ大型LNG燃料フェリーを例にメリット、課題について説明された。
LNG燃料フェリーのメリットとしては、環境性能が抜群で、ほぼ無臭・無色の排気であること、燃焼生成物が少ないといった点が挙げられるが、その一方で、導入や運航でのコストが高く、船員の技能取得や船舶への燃料供給面での課題がある。燃料供給については、現在、Truck to Ship方式であるが、燃料供給の頻度や燃料補給作業に従事する者には資格が必要といった点なども考慮し、将来的にはLNGバンカリング船を利用したShip to Ship方式への変更を検討している。
 また、運送業界のカーボンニュートラルを考えた時にLNG燃料フェリー利用によるCO2削減効果は大きいことから、大洗〜苫小牧航路に2隻投入予定。これらの船舶には推進効率を高めた高性能エンジンや省エネ装置などの新技術を採用、トラックの積載台数も増加となる。低速エンジンとすることで低燃費となり、深夜便として就航し、物流中心の船となる。フェリーの利用は脱炭素、2024年問題への解決策として有効であり、フェリーのシェアがこれからますます拡大していくものと予想される。
 商船三井グループでは今後も脱炭素、低炭素化実現に向けたクリーン代替燃料の導入を推進していきたいと述べられました。

【事例発表2 寺田講師:海の高速道路〜モーダルシフトの受け皿に〜】
 本年3月まで猶予されていた「働き方改革関連法」の自動車運転業務への適用が4月に開始されたことを受け、2024年問題のポイントや改善基準告示の内容、ドライバーの現状について説明があった。時間外運行の減少や物流コストの上昇がドライバー、運行会社、荷主に及ぼす影響について解説された。              
 2024年問題への社会的注目が高まる中、こうした課題を解決するための方策の一つとして海上モーダルシフトが進んでいる。長距離フェリーを活用することのメリットとして、有人車航送の場合、フェリーの乗船時間は休息時間として取り扱うことができる。また、定時性に優れており、事故や渋滞に巻き込まれることがなく、事故率の低下にも繋がるといった点について紹介があった。
 無人車航送の場合では、トラックドライバーの賃金、燃料費、高速道路の利用料が削減でき経済合理性で優位である。軽トラックから大型トレーラなど様々な種類の車両の積載が可能であり、荷崩れ・荷痛みも少なく輸送品質の面でも優れている。環境問題が地球規模の課題となる中、海上輸送への転換は、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みであり、長距離フェリーは地球環境にやさしい輸送機関と言える。さらに、大規模な自然災害が発生した際の代替輸送機関としても役割も担うことができる。
 今後もモーダルシフトの受け皿としての役割をしっかりと果たしながら環境問題に取り組んでいくと述べられました。   

 気候変動問題への対応が全産業的に求められる中、海事・海運分野におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みは重要です。今後もこうしたコロキアムやセミナー等の機会を通じ、海運、物流、造船・舶用などの事業者はもとより、カーボンニュートラルの実現に向け取り組みを進めておられる方々にとりまして、参考となるような情報を提供して参ります。





第65回九州運輸コロキアム開催について
2024/09/12

                   第65回九州運輸コロキアムのご案内

 この度、(公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成による「第65回九州運輸コロキアム」を下記により開催致します。
 2050年のカーボンニュートラルに向け、交通運輸分野においてはトラック輸送の効率化のほか、モーダルシフトの推進、カーボンニュートラルポートの形成促進、鉄道・船舶・航空機の脱炭素などを推進するとされたことから、各モードにおいて脱炭素化に向けた燃料転換等、さまざまな取り組みが進められているところです。
 本コロキアムでは、中村学園大学大学院、特任教授の星野裕志氏より「カーボンニュートラルに向けた九州の港湾対応」について、(株)商船三井さんふらわあ、特別顧問の赤坂光二郎氏より「脱炭素化へ向けた取り組みについて」、東京九州フェリー(株)新門司支店長の寺田光徳氏より「海の高速道路〜モーダルシフトを受け皿に〜」についてご講演頂きます。目標達成に向けた取り組み方策や進め方、課題、展望等の意見交換や質疑応答なども行い、交通分野におけるカーボンニュートラルについて考えられている方々にとって、有益な講演となっております。ご関心をお持ちの皆様には、ぜひご参加を頂きますようご案内申し上げます。
 なお、会場の都合等がございますので、ご参加の申し込みは10月9日(水)までに下記要領にてお願いいたします。

                       記
       ○日  時 : 令和6年10月11日(金)13:30 〜15:30
       ○会  場 : オリエンタルホテル福岡 博多ステーション 3階 YAMAKASA
       ○講演等の概要
        <基調講演> 
         テーマ:「カーボンニュートラルに向けた九州の港湾対応」
         講 師:中村学園大学大学院流通科学研究科 特任教授 星野裕志様 
        <事例発表1>
         テーマ:「脱炭素化へ向けた取り組みについて」
         講 師:株式会社商船三井さんふらわあ 特別顧問 赤坂光次郎様 
        <事例発表2> 
         テーマ:「海の高速道路〜モーダルシフトを受け皿に〜」
         講 師:東京九州フェリー株式会社 取締役営業部長兼新門司支店長 寺田光徳様
        <意見交換> 会場参加者を交えた自由討論

       ○申  込  お電話をいただくか、または当センターホームページのお問合せフォームにて、
             通信欄に「セミナー参加希望」と明記して、会社名・住所・電話番号・参加され
             る方の役職名及びお名前を記入の上、令和6年10月9日(水)までに、お申し込み
             ください。(参加無料、セミナー参加人員70名)



★お問合せ先
  公益財団法人 九州運輸振興センター
  TEL 092-451-0469  FAX 092-451-0474





企業経営基盤強化等セミナー(事業承継セミナー)開催報告
2024/09/04

                企業経営基盤強化等セミナー開催報告

 令和6年8月28日(水)、福岡市において企業経営基盤強化等セミナー(「事業承継セミナー」)を開催しましたので、その概要を報告致します。

   〇 日  時 令和6年8月28日(水) 13:30 〜 15:30
   〇 会  場 オリエンタル福岡 博多ステーションホテル3階 YAMAKASA
   〇 主  催 公益財団法人 九州運輸振興センター
   〇 後  援 JR九州
   〇 協力団体 九州旅客船協会連合会 九州地方海運組合連合会
            全国内航タンカー海運組合西部支部
   〇 プログラム(講演のみ)
     第1部(20分) 
     講師 九州産業大学 地域共創学部地域づくり学科 准教授 行平真也氏
     テーマ 「九州管内における海運事業者の事業承継の現状について」       
     第2部(80分) 
     講師 福岡県事業承継・引継ぎ支援センター 
        サブマネージャー 廣門 和久 氏(中小企業診断士)
     テーマ 「〜円滑に事業承継を進めるため、今から準備を始めませんか?〜」
   〇 参 加 者 会場23名、オンライン参加31名 合計54名

   〇 概  要

【第1部:九州管内における海運事業者の事業承継の現状について】 
 離島を多く抱える九州地域において、生活物資の運搬や人の移動を担う海運事業者は重要な役割を担っているが、少子化、高齢化が急速に進む中、労働力不足や後継者不足が大きな課題となっている。これを受け、事業承継に関する現状や課題を把握することを目的とし昨年度、九州運輸振興センターからの委託によりアンケート調査を実施した。
 経営者年齢別の後継者の決定状況について、「後継者は決めていないが、事業は継続したい」という回答において、経営者が50歳未満では40.9%、70歳以上の経営者でも15.4%となっている。
 「既に後継者を決めている」についての回答では経営者の年齢が上がるほどその割合が高く70 歳以上では40.4%となっている。
後継者を決めていない理由として、「これから検討を始める予定」との回答が最も多かったが、「適当な後継者が見つからない」「子・親族に事業を継ぐ意思がない」「事業を継ぐ子・親族がいない」などの理由もみられた。
また、「後継者は決めていないが事業は継続したい」と回答した者において、事業承継を行うにあたっての障害・課題では「後継者の探索・確保」を挙げる者が多く、後継者の確保が重要な課題となっている。
さらに、「事業承継について相談を行っている」と回答した者はわずか14.0%で、その相談先としては、税理士、会計士、金融機関が多かった。
 今回の調査結果をもとに考察すると、事業承継の進め方や支援策について、事業者に知見が得られているのかが懸念される。
 今後も事業を継続するにあたり、第2部での講演を含め本日のセミナーが事業承継を考えるきっかけになれば幸いである。

【第2部:〜円滑に事業承継を進めるため、今から準備を始めませんか?〜】
 事業承継とは現経営者から後継者への事業のバトンタッチを行うことであり、企業がこれまで培ってきたヒトやモノ・カネのほか、目に見えにくい経営資源(知的財産)を含め、様々な資源を引き継ぐことである。事業を渡す者(現経営者)は、引き継ぐ者(後継者)ができるだけ順調に事業運営が行えるように多面的に事業を磨き上げるとともに、支援を行う必要がある。後継者は伝統を守りつつ、新たな知識・技術を用いて事業の成長を遂げなければならず、事業承継は会社の存続において極めて重要な課題である。
 事業承継の成功のカギは「バトンタッチの日」を決めることであり、「ゴール」を決めることから始まる。
 事業承継は親族内承継、従業員承継、第三者承継の3つに分けられる。事業承継の現状として、1983年以前は後継者の大半が親族だったが、近年は従業員と第三者承継が大幅に増加している。そして、日本において事業承継が遅れているということをまず認識しなければならない。
 事業承継の進め方は3つそれぞれではあるが、親族内承継、従業員承継については事業承継に向けた必要性を認識し、事業承継の意思を固めることから始まる。その後は、経営状況・経営課題の把握(見える化)、事業承継に向けた磨き上げを行い、段階を踏みながら進めていくのが一般的。
 第三者承継については、まずは相談・検討といった準備段階から交渉段階、実行段階へと進めていくが、M&Aの成功の鍵で重要なのは、最初の取り掛かりである。ここではその業界に強いアドバイザーをつけるということが大きなポイントとなるが、何れにしても早め早めに動いていくことが重要。
 事業承継に関する支援策として国や県等でも補助金や税制面での支援メニューを用意している。各支援メニューにおいて、補助対象となる経費や補助率、補助上限、申込受付期間などが異なるので、詳細は各機関のHP等により確認願いたい。
 福岡県事業承継・引継ぎ支援センターは国が設置する公的相談窓口であり、事業承継計画書の策定支援のほか情報提供、マッチングなども無料で行っており、中小企業の事業承継に関するあらゆる相談に対応している、と締めくくられた。

 現在、交通運輸・観光事業者を取り巻く経営環境は、人手不足、物価高、燃料油価格の高騰など多くの課題があります。そうした中、将来にわたりその活力を維持していくためには、円滑な事業承継によって事業価値をしっかりと次世代に引き継ぎ、事業活動の活性化を実現することが不可欠といえます。今般のセミナーが皆様の今後の事業運営にお役立ていただければ幸いです。





第26回海事振興セミナー(九州クルーズセミナー)開催報告
2024/09/04

                第26回海事振興セミナー開催報告

 令和6年7月31日(水)、福岡市において第26回海事振興セミナーを開催しましたので、その概要を報告致します。なお、今回の海事振興セミナーは、九州クルーズ振興協議会との共催で、同協議会総会の後に「九州クルーズセミナー」として開催致しました。

   〇 日  時 令和6年7月31日(水) 14:20 〜 16:00
   〇 会  場 オリエンタルホテル福岡 博多ステーション3階「YAMAKASA」
   〇 主  催 公益財団法人 九州運輸振興センター 九州クルーズ振興協議会
   〇 後  援 JR九州
   〇 プログラム
      講演1 講 師:国土交通省海事局外航課 課長補佐 楠山 賀英 氏
            テーマ:我が国のクルーズ振興における課題と方向性
      講演2  講 師:日本国際クルーズ協議会 副会長 糸川 雄介 氏
            テーマ:アジアにおける日本のクルーズの展望
      講演3  講 師:一般社団法人クルーズイズム 代表理事 久野 健吾 氏
            テーマ:クルーズの魅力と発信の重要性
   〇 参 加 者 73名

   〇 講演概要

 国土交通省海事局外航課課長補佐の楠山賀英氏から「我が国のクルーズ振興における課題と方向性」をテーマに、日本の出入国者数や訪日外国人クルーズ旅客、日本人クルーズ人口、さらに旅行の中のクルーズの位置づけについて紹介があった。訪日旅客の直近の動向や訪日クルーズ旅客の推移では、2024年6月までの訪日外国人旅客数が313万人と2019年の288万人を上回り、その中でも中国からの旅行者は66万人で2019年比75%となっている。
 2019年の中国人クルーズ旅客は全訪日クルーズ旅客の80.8%となっており、今後の訪日クルーズのカギは中国人旅行者の回復にあるとの指摘がありました。
 我が国のクルーズ振興の拡大に向けては、@クルーズ船のスムーズな寄港を促進させるインフラ整備、A観光資源・素材・コンテンツ開発、Bマーケティング・プロモーションの実施、C裾野の拡大、D日本船の供給量増加といった課題の他、オーバーツーリズム、や人財育成、二次交通、制度面での課題や寄港地の受入意識等の課題が存在する。
 これら課題の解決に向けて、国では、公共交通利用環境の革新等事業によるインフラ整備のほか様々な支援メニューを用意しているが、限定的な支援が多く、船社の意向や作業面の優先度から有効な対策(補助)となりきれていないとの見解が示されました。
 まとめとして、「クルーズ振興の課題は多岐に亘るが、官民連携の流れを重視し、物理的な裾野の拡大に向けて集中的に注力する。クルーズ市場は拡大基調にあることから、中長期的視野で乗船促進のコンテンツ、集客促進につながる販促のあり方などを業界団体と連携して講じたい」と述べられ講演を締めくくられました。

 日本国際クルーズ協議会副会長の糸川雄介氏は「アジアにおける日本のクルーズの展望」〜邦船、外国船の取り巻く状況から、日本市場の展望を考察する〜と題して講演されました。
 最近ラグジュアリークラスのクルーズ船の寄港が増えてきていることから、2023年日本発着のシルバーシーの例をもとに、日本全体での評価について解説がありました。 
 寄稿地での市民交流、桜など日本らしい風景は評価されるが、英語ガイドのレベルや地方港でのコンテンツ不足は評価を下げる要因となっており、多言語対応(ガイド育成)が課題となっている。近年日本発着で、韓国3港へ寄港する商品も出てきており、日本国内で寄港地を競っていたが、海外寄港地との競合へと変化しているという指摘がありました。
 邦船を取り巻く環境として、現状2社2隻だが、各々新船の就航を控えており、また、新規参入も現れ始めている。日本人クルーズ市場の拡大が命題ではあるが、既存2社においては、海外インバウンドマーケットが全体の20%となっており、その集客も課題と言える。   
 一方、欧米船社はコロナ禍の影響で未だ負債を抱えているが、その一方で、2023年の世界のクルーズ人口は3,170万と2019年から200万人増加し、各社過去最大の予約数となっている。米系船社はアメリカを中心に配船しており、ラグジュアリー、エクスペディションの新規参入や新造船が増加。さらに独立系MSCクルーズやバイキングクルーズが躍進するなどの状況となっている反面、中国市場の回復は遅れている。
 このため、中国市場を中心にアジアへの配船減少などが課題となっている。インバウンド中心の状況下、その客層に飽きられてしまうと、配船が大幅減となる可能性もある。
 コロナ再開後の船社はニーズに応じた配船を強化しており、人気エリアへの配船となっている。この先、外国船を日本に配船させるためには何をターゲットとするのか、国籍(市場)別に考察し、今後の方向性を考え、より一層インバウンドのニーズに応じた配船が求められる。
欧米市場向け(プレミアムクラス・ラグジュアリークラス)には、寄港地観光の高質化、新たな魅力の開発が重要となってくる。アジア市場向け(カジュアルクラス)には、中国無くして寄港回数の増加は見込めないことから、オーバーツーリズムの課題へどう取り組むかがポイントとなる。日本市場向け(プリンセスやMSC)については、市場が拡大することで、通年型での配船が見込めることから、日本市場の拡大(アウトバウンド)が重要であり、そのことが外国船を日本に止めおくことにも繋がる。「今後、イン・アウトの双方向に向いた施策を講じて、継続・安定の配船を目指す」ことが重要と述べられました。

 一般社団法人クルーズイズム代表理事の久野健吾氏から「クルーズの魅力と発信の重要性」と題して講演があり、クルーズの魅力について、@圧倒的な非日常、A高いコストパフォーマンス、B食事、Cエンターテイメント、D身軽さ、E交流、F絶景、G効率的な移動、H家族旅行、I教育、Jエクスカーション、K安心・安全といったキーワードを挙げられ、自身の乗船経験なども交えながら説明されました。
 (一社)クルーズイズムにおける活動概要等の紹介後、我が国におけるクルーズ旅客及び人口の年齢構成比をもとにしたターゲット設定や、情報発信の手段としてのSNSの効果的な活用方法等について、同協会での取り組み事例や実績をもとに説明があった。最後にクルーズ旅を広める活動を通して、日本のクルーズ業界を応援していきたいと述べられ、講演を締め括られました。

 令和5年3月より本格的に国際クルーズの運航が再開され、多くのクルーズ船が全国の港湾に寄港しています。クルーズ船の寄港は地方誘客・消費拡大という面で大きなポテンシャルを有していることから、今後も九州クルーズ振興協議会等とも連携して、情報発信に努めて参ります。







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