(公財)九州運輸振興センター トップページお問い合わせ 日本財団 助成
会長からのご挨拶センターの概要主な事業内容及び業績賛助会員入会のご案内定款リンク集

九州うんゆジャーナル
九州運輸コロキアム
講演会
海事振興セミナー
企業経営基盤強化等セミナー
調査研究
調査研究報告会
受託事業一覧
懸賞論文募集
九州の運輸統計
事業報告書及び決算書
事業計画書及び予算書
お問い合わせフォーム
九州運輸コロキアム

※画像クリックで拡大表示します。

「運輸・観光 女性活躍促進セミナー 〜女性活躍の一層の促進に向けて 〜」
第回

日時令和4年3月18日
場所福岡市 TKPガーデンシティ博多 新幹線口「プレミアムホール」
講師@女性採用に向けた事業者の意識改革
 (一社)女性バス運転手協会 代表理事 中嶋美恵氏
A観光における女性の力
 大正大学社会共生学部公共政策学科 教授 柏木千春氏
B女性採用活動におけるポイント
 (株)リクルートジョブズリサーチセンター センター長 宇佐川邦子氏
C女性活躍のための環境整備に向けて
 厚生労働省福岡労働局雇用環境・均等部 部長 室谷留美氏


                  運輸・観光 女性活躍促進セミナー開催報告


@『女性採用に向けた事業者の意識改革』
 バス運転手不足の原因として、高齢化「団塊の世代退職の10年問題(2007年に団塊の世代が60歳に達し、2022年に75歳。団塊世代ジュニアが現在50歳で10年後に定年)」や中高年の男性に偏った採用であり、改善のポイントは「若者と女性の採用」にある。しかし、応募は未経験の中高男性からがほとんどで、若者や女性のバス運転手のなり手は少ない。
 バス運転手に必要な大型二種免許所有者は、約6割が60歳以上で、男性833,000人に対し女性は15,000人、2019年と2020年の比較では男性が3000人減少し女性は34人増加している。
 女性バス運転手への懸念として「運転が苦手」、「ステアリングが重いのでは」、「MT車は無理では」などが言われているが、逆に運転が得意で好きな人もいれば、バスもAT車が増えるなど状況は変わってきており、女性運転手のイメージも、運転がソフト、アナウンスが優しい、お年寄り・子供たち、からだの不自由な方から評判が高いなどとなっていると説明されました。
 また、運転手の募集にあたって、ポスターを張って応募する従来型とネットによる求人など二極化しているが従来型では応募が少ないのが現状、バス運転手の採用を増やすには、積極的に女性を採用する意識改革が必要であり、また、バス運転手未経験者でも幅広く採用し自社で研修を進め育てることが重要であることなどバス業界の現状が説明されました。
 最後に女性を採用するにあたって、女性用設備は年齢・状況を問わず必要であるが、平均的な女性の生涯を考慮すべきで、初婚30歳、第1子出産31歳、32〜38歳子供が保育園、38歳〜44歳子供が小学校、44歳子供が中学校となり、子供が中学生以上であれば男性と同じよう勤務が可能となるため、この年齢を中心に採用を進める必要性を説明されました。

A『観光における女性の力』
 観光統計データから女性は観光旅行市場を創造している存在であり、全就業者数に占める女性の比率は、男女雇用機会均等法の施行以来増加傾向にあり、平均初婚年齢、第一子出産平均年齢が遅くなっている。しかし、逆に経験値を持っている人が増えていることが言え、また子育て期間でも働きたい人が増えているなど観光地域づくりに活かせる女性の資質と経験が高くなってきていることが説明されました。
 女性は、「働きたい」「学びたい」「誰かのために行動する」といった意欲が地域活性化の原動力になるととらえられており、女性の特性として、情動、感情が豊か、感情を伝えるのが上手い、情緒的な出来事をよく覚えている、ながら仕事が得意などの能力が男性より高い。また、「つながり」「謙虚」「素直」「忍耐」「共感」「信頼」「寛容」「柔軟性」「弱さ」「調和」など女性的な資質がリーダーシップとして優れていると言われており、女性と男性には身体的な構造上、「性差」はあり、社会的・文化的背景も影響するが、差や女性的な資質に目を向けることで、女性の活躍だけでなくイノベーションを生む機会に繋がるのでと説明されました。
 最後に、女性の資質と経験を活かすには、観光地域づくり法人などにおいて積極的な役員の登用を図ることにより変革型・女神型リーダーシップを発揮することにつながり、また、戦略会議・理事会などで発言の機会を創出することで、平和的な関係づくり、共感力を活かした機会が増えることにつながる。また、観光地域づくりに関わる女性を増やすためには、活躍の場は沢山あるが経験・知識・スキルを持った人を特定し、その人たちを誘い出し見つける機会を沢山つくり、その人達が活躍できる柔軟な時間設定するなどを支援すればダイナミックな事業に繋がっていくと考えていると締めくくられました。

B『女性採用活動におけるポイント』
 有効求人倍率はリーマンショック時(2009年)に0.47倍まで悪化したが、コロナ禍でも1倍を超えたままで失業率もリーマン時5.1%まで悪化したが、コロナ禍でも3%を割っていない。離職率でもリーマン時5.1%から減少し2019年が底で2021年11月は2.8%で人余りではない。産業別雇用者の2019年及び2021年7−9月の対比でも宿泊・飲食で50万人減少したが、医療福祉・情報通信等では68万人増加しており、失われる雇用部分を吸収する産業があるなど労働市場全体の説明がありました。
 しかし、人手不足感はコロナ禍でも一時改善したが現在では悪化して来ており、人口減少、若年人口の激減、高齢化の構造的な課題が原因で、労働人口は30年間で1割減り、29歳以下は4割減り、2030年にはシニアも減少する状況にある。
この人手不足解消のためには、働く女性を増やす、働くシニアを増やす、外国人を増やす、生産性を向上させることが解消のポイントである。特に女性を増やすためには働いていない既婚女性180万人に働いてもらうことが必要で、そのために働く時の不安要素を解消しなければならない。中小企業では人出不足・育成難を4割以上が考えており、2022年注力したい分野でも人材確保・育成を過半数の企業が考えていることの説明がありました。
 次に、求職者の意識として仕事探しの重点に考えているのは、勤務日数、勤務時間、勤務地で、女性6割、男性で4割が重要視しており、賃金より働き続けられる勤務時間や確実な休日取得など考えている。33歳以下の初職離職理由も、勤務時間・休日、心身負担、やりたい仕事ができないというのが原因となっている。
 また、勤務時間も新入社員の残業時間の許容範囲は、1か月残業31時間はOKが約3割、20時間までが男性1/3、女性2/3で、若者の勤務時間の理想は1日7時間であり、女性の場合は6時間程度を希望する者が多く、正社員も7時間までが希望であり、勤務時間7時未満、残業なしの求人の効果は大きいとの解説がありました。
 ドライバーの実態では、求職者がドライバーを希望するケースは男性でも低いが女性はさらに低くメカニックも同様である。一方、避けたい職種として男性ではドライバーは3割、メカニック2割、女性ではドライバー5割、メカニック4割程度となっているが、職種として認知されていないことも要因として考えられる。また、ドライバーが離職した理由の上位は、仕事がきつい、体力的にきつい、時間が長い、残業が多い、休日が少ないが上位で、給与に関しては現状より今後期待できないことの理由が大きい。現在働いている人が改善してほしいところは、人員増、有給休暇、残業減、シフトを変えてほしいなど負荷軽減と評価、スキルアップ、適材配置の環境改善が上位となっており必ずしも賃金が要因ではなく働くことを如何に柔軟にしていくかが大事であることが説明されました。
 最後に、職員の採用には「勤務日数・時間」と「心身負担軽減」への対応が大切であり、これがうまく改善することによって、女性に限らず若者の離職・転職防止に繋がり、採用力が上がることに繋がることを考えると、「女性だから」「女性は特別」と考えるのではなく各社の従業員全員にメリットがあることだと考えていただきたい、これからの少子化で若手の採用が益々難しくなる中、いかに若者を採用するかを考えるとき避けて通れないことであると締めくくられました。

C『女性活躍のための環境整備に向けて』
 女性活躍促進法は女性能力を十分に発揮してできる社会とするため平成28年に施行された。今般、一部改正され、@常用労働者301人以上から101人以上の事業主に一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大、A女性の職業生活における活躍に関する情報公表の強化、
B女性活躍に関する取り組みが特に優良な事業主への「プラチナえるぼし」の創生が図られ令和4年4月1日から施行されたことが報告されました。
 行動計画では、@採用、就業継続、労働時間等、管理職の割合など自社の女性労働者の「活躍状況の把握」と「課題の分析」、A1つ以上の数値目標を定めた行動計画の策定、社内周知、公表、B行動計画に策定した旨の都道府県労働局への届出、C女性の活躍に関する1項目以上の情報公表など事業主の責務と行うべき具体的内容が説明され、また創設される「プラチナえるぼし」では商品や求人広告等に付けることができ、企業イメージ向上や優秀な人材確保などが期待でき、福岡県内では38社が認定を受けていることが説明されました。
 また、男女雇用機会均等法の性差別禁止の順守にとどまらず、企業における男女差別解消を図るため、女性の能力発揮を図るために個々の企業が進める自主的かつ積極的な取り組みとして「ポジティブアクション」が説明され、女性活躍を雇用管理上の施策と考えず経営戦略ととらえ継続した取り組みを期待するもので、具体的には募集・採用、職域拡大、登用、継続就業、環境整備・風土改善をテーマとして各社での取り組み進めてほしいことが説明されました。
 さらに、改正育児・介護休業法に基づく取り組みとして、令和4年10月1日から実施され育児休業を取得しやすい雇用環境整備、妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、産後パパ休の創設、育児休業の分割取得など法制度を中心に説明がされました。

 今回のセミナーでは、色々な視点で女性活躍の一層の促進に向け取り組まなければならない課題を講演いただき、女性が志望する職場こそ若者や男性も希望する職場基盤であると感じました。このセミナーが女性の活躍、企業基盤の構築に資することを期待します。





物流効率化シンポジウムin大分
 −RORO船を活用した物流効率化の展望を探る−
第回

日時平成31年1月22日(火) 13:30 〜 16:35
場所大分県庁 正庁ホール
講師・基調講演  
  「海運モーダルシフトを支える内航RORO船」
    講師:三菱造船(株)マリンエンジニアリングセンター  
        造船設計部 計画設計課 主席技師 森 哲也 氏
 
・大分県の取組紹介
  「九州の東の玄関口としての拠点化戦略とRORO船航路」
    講師:大分県土木建築部港湾課 ポートセールス推進監 八坂悦朗
  
・物流効率化取組事例の紹介
  「本州⇔九州間における長距離最適輸送モードの確立」
    講師:センコー(株) 東九州車両支店長 殿村英彦 氏
  
・パネルディスカッション
  コーディネーター (公財)九州経済調査協会 事業開発部長 岡野秀之 氏
  パネリスト     (株)柳川合同 代表取締役社長 荒巻哲也 氏
             商船三井フェリー(株) 大分営業所長 今野真直 氏
              川崎近海汽船(株) 大分事務所長  塩見 圭氏
              日本通運(株) 大分海運事業所長 佐藤信宏 氏
  アドバイザー    国土交通省九州運輸局 交通政策部長 阿部雄介


                   物流効率化シンポジウムin大分を開催
                −RORO船を活用した物流効率化の展望を探る−

 (公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成による「物流効率化シンポジウムin大分」を、国土交通省九州運輸局及び大分県との共催により、平成31年1月22日(火)、大分市において開催いたしました。
  このシンポジウムは、労働力人口の減少によるトラックドライバー不足や長時間労働の改善のため「RORO船」を活用した物流効率化を推進するために開催したものです。

  基調講演では、三菱造船(株)の森主席技師から、RORO船へのモーダルシフト促進のためには、運送コスト競争力強化、運送スピード競争力強化を求められる運送会社と大型化・高速化・省エネ化やライフサイクルコスト最小化を求められる船主、さらには船舶を建造する造船所が協力し良い船を造ること。造船所においては船主等の要望を最大限に応えるため設計、建造技術力の向上や新技術導入を図っていく努力を続けていく必要がある。また、港湾整備にあたっては競争力に優れたRORO船を生むために、公共岸壁の水深や陸上架道橋の整備など港湾・海事の連携した取り組みも大事であるとの説明がありました。

  大分県の取り組紹介では、平成29年3月に策定された大分県の施策として推進されている「九州の東の玄関口としての拠点化戦略」の策定の背景、目的、施策等の説明がされました。大分のRORO船航路状況やRORO船基地である大分港は東九州自動車道ICから7.3kmに位置し、九州各都市への道路網が充実しており、地域高規格道路「中九州横断道路」の整備中といった優位性があるとの説明とともに、RORO船の利用を促進するため、官民一体となった利用促進協議会を設置し取り組み、ポートセールスのためのセミナーの開催や大分県独自によるRORO船利用助成事業の紹介がされました。

  物流効率化取組事例の紹介では、センコー(株)の殿村東九州車両支店長より、本州⇔九州間における長距離最適輸送モードの確立の取り組の説明と今後の長距離輸送のあり方として、東京、大阪それぞれにドライバー・トラックを充て長時間の拘束時間を要している。そこで大分に広域輸送網の中心となる物流ハブ機能を設け、九州各地の発地から大分港まではトラック輸送とし、ハブで仕分け、積替え、複数社の荷物を集約して幹線密度を上げ、船舶での無人輸送への変換することで幹線部分の輸送時間の短縮やドライバーの拘束時間削減につなげていくことが必要。また、関西、関東から九州向けの貨物についても大分のハブを活用した輸送により改善を図る。長距離輸送の長時間労働を解決するためには幹線部分の陸送から無人航送への転換が有効であり、無人航送をさらに進化させるには広域輸送網の中心となるハブ機能が必要不可欠であると説明がありました。

  パネルディスカッションでは、大分は、東九州道が暫定ではあるが全線が繋がり、さらに中九州で熊本までの幹線道路の整備が進み、広域に貨物が集荷できる地域となっているので、関西、関東からの貨物も期待でき、ポテンシャルのある地域で期待も大きい。色々課題もあるが、RORO船各社とも船を増やし積極的に供給体制を変えて行くことを考えている。コストが下がり性能が良くなる船が出てくる。トライアルも含めてモーダルシフトを進めて行ければと考えている。
  大分でのRORO戦を使ったモーダルシフトの取り組を盛り上げていただきたいとのまとめがありました。

  今回の「第63回九州運輸コロキアム」には、観光事業者、経済団体、行政などを中心に幅広い関係者に参加いただき、140人の参加人数となりました。
  参加された皆様には、今後の取り組みなどに参考になる有意義で貴重なものとなりました。





九州の今後の観光を探る!
 欧米豪から見た観光地「九州」と「女性」の視点で観光を考察!
第63回

日時平成30年11月30日(金)13:30 〜16:00
場所ハイアット・リージェンシー・福岡
講師第一部 欧米豪から見た九州の関心度 
    ・調査概要 国土交通省九州運輸局観光部
    ・調査内容 (公財)九州経済調査協会 調査研究部 島田研究主査
     ※情報提供
     (一社)九州観光推進機構・九州観光に関する旅行者インサイト調査(速報)

第二部 女性の視点で観光を考察!《パネルディスカッション》
    ・コーディネーター
       西日本鉄道(株) 取締役 大黒伊勢夫 氏
    ・パネリスト  (氏名:五十音順)
       稲積京子 氏  (一社)別府インターナショナルプラザ 代表理事
       柿田紀子 氏  (同)D.M.P LABO 代表取締役
       重留美穂 氏  TOTO(株)九州支社プレゼンテーショングループ
       綱川明美 氏  (株)ビースポーク 代表取締役
       外山由恵 氏  (株)くまもとDMC 常務取締役  


                         九州の今後の観光を探る!
            −欧米豪から見た観光地「九州」と「女性」の視点で観光を考察!−


 (公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成による「第63回九州運輸コロキアム」を、国土交通省九州運輸局及び(一社)九州観光推進機構との共催により、平成30年11月30日(金)に福岡市において開催いたしました。

  第1部ではインバウドの状況として、九州の外国人入国者数は、最近3年間で約3倍に増加しているが97.3%がアジアからの訪日旅行客であり、また、2015年以降、九州での訪日旅行客の実宿泊者数が入国者数の伸びを上回っており、広域観光スタイルが浸透している状況がある。さらに、各国の国民1人あたりの国際観光支出は欧米豪が上位を独占しており、欧米豪からの訪日滞在日数は約2週間と長い、といった状況がある。そのため、今後、欧米豪からの誘客を増やすために、九州を訪れた欧米豪からの訪日旅行客の関心度や認知度、行動などについて分析し、対応策の基礎資料とするために九州運輸局が実施した「欧米豪から見た九州の関心度」の調査結果が報告されました。

  調査結果として、@欧米豪とアジアでは関心のアンテナが全く違う。A基本的に滞在型の欧米豪のインバウンドの中で、フランス人は相対的に県をまたいだ周遊が多い。B自然景観への関心は欧米豪いずれの国でも高い。C欧米豪では九州だけでなく日本の地方に対するイメージが無いのが現状。このような状況であることから、九州での観光の取り組みとして、九州全体で、北海道の自然のような強烈なイメージをつくりつつ、各観光地では受入体制の充実を図っていくことが必要である、との報告がされました。

  第2部では、「欧米豪から見た九州の関心度」の調査結果を踏まえ、今後の各地域での取組の参考としていただくため観光分野の最前線で活躍されている5名の女性に参加いただき、当センターの大黒九州運輸コロキアム実行委員長をコーディネーターに意見交換が行われました。
  各パネリストから自社の事業展開や観光に関わる取組みが紹介され、意見交換では、欧米豪から見た九州、女性視点による九州の海外への売り込み、外国語対応などの受入れ環境整備、マーケティング手法・分析・WEB、地域戦略など、パネリストの方々のこれまでの経験などを踏まえ、それぞれの立場から発言がありました。
 
  今回の「第63回九州運輸コロキアム」には、観光事業者、経済団体、行政などを中心に幅広い関係者に参加いただき、当初予定の150人を大幅に上回る189名もの参加人数となりました。
  参加された皆様には、今後の取り組みなどに参考になる有意義で貴重なものとなりました。





海事行政の最近の動向について
第62回

日時平成30年7月2日(月) 13:30〜15:30
場所ホテルセントラーザ博多
講師国土交通省 海事局 次長 大 坪 新一郎 氏


           海上安全・海洋環境の課題への対応は海事産業の持続的発展が不可欠
                −国土交通省 海事局 次長 大坪新一郎氏が講演−


 (公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成による「第62回九州運輸コロキアム」を、国土交通省海事局次長 大坪新一郎氏を講師にお迎えし「海事行政の最近の動向について」をテーマに、平成30年7月2日(月)、福岡市において開催いたしました。

  講演では、冒頭に「海事産業の生産性革命の深化の取組」に関して、造船・舶用関係は85%が国内生産で、特に地方での生産が特徴であり、造船・舶用・海運は物資の調達を通じ一体となって成長してきた。そのため、商船分野での政策として、船の開発・設計段階で性能と時間の競争力、建造段階でのコストと品質の競争力、運航の段階での顧客サービスの競争力を高めるため、舶用産業への補助、既存船への追加機器設置作業等を補助対象事業として取組んでいる。また、生産性革命の取組は2年前から進めているが、新造船受注量の激減など当時の状況から変化が生じている。そのため、新たに取り組むべき重要課題及び今後の方向性が示されました。
  日本人技能者の確保・育成、外国人材の活用方策、先進船舶の導入・普及、自動運航船の取組の推進、海洋開発分野としてビジネス拡大に向けた技術開発の支援、海のドローンの活用に向けた環境整備、浮体式洋上風力発電のコスト低減に繋がる取組、さらに船舶より得られるビッグデータを活用した取組を推進していくことが説明されました。

  また関連した施策として、「自動運航船の導入と実証事業」に関して、海難事故の77%はヒューマンエラーに起因しており、安全性の確保が課題。これまで省エネ技術を軸にしておりこれからも同様であるが、ブローバンドの発達を活用し、海難事故の減少、船員労働環境改善・職場の魅力向上、造船・舶用工業の競争優位性の軸に差別化した取組を進める。
 「造船業・舶用工業分野における外国人材の受入れ」に関して、現在、建設、造船業で技能実習3年後に2〜3年の特定活動を認めていたが、2022年以降出来なくなる。そのために新たな在留資格制度として、技能実習3年修了者は、その後通算5年間日本滞在が出来ることが考えられている。また、技能実習がなくても 日本語の試験に合格した者など第三者機関での試験の合格者も滞在が出来ることとなる。さらに決まっていないが第三者機関による上級試験合格者などはその先も就労目的の在留の可能性があるといった検討状況の説明がありました。 

  さらに、海運事業者が特に関心を持っている「SOx規制対応」では、今後、低硫黄C重油の需要が一番大きく重要になる。需要を減らすため、LNG船へのシフト、小型貨物船では今でもA重油使用が多いのでA重油への選択、スクラバーの設置を増やすなどにより分散させる。供給では低硫黄C重油を増やすため製品のスペックをはっきりさせ、安心して使用できる油とする確認が必要である。
  今後の対策として、需要サイドでは需要の集中が想定される低硫黄C重油の供給安定化に向けた具体策として、石油業界が燃焼試験用のサンプルをこの夏に出す。7月から経産省予算により海上技術安全研究所で燃焼試験を行っていく。また、スクラバー搭載の試設計・工期短縮、スクラバーの小型化、労働環境改善船への建造金利の優遇,LNG燃焼船実証事業など取組んでいる・・・などといった各政策に関する取組の説明がされました。

  最後に海事行政は、海事産業の基盤を強化しその持続的発展を支援しつつ、海上安全・海洋環境の保護・改善をしていくことが大切。そのためには、その時代により違うが、安定した海上交通の確保、安全・環境対策など社会的ニーズへの対応、AI、IOTなど技術革新への対応、公正な競争条件の確保、シェア拡大など国際競争への対応が課題である。海事産業は国際競争から避けて通れないため、省エネの更なる追及や次の差別化の軸を確立する技術開発・イノベーションの促進、人材確保、SOx規制など社会への適切なコスト転換を図る海事産業のプレゼンスの向上、世界共通のルールや国際機関等の議論をリードする日本主導の国際ルール策定と運用が必要であると締めくくりました。
 
  講演後の討議(意見交換)においては、参加されていた皆様から、「AI、IOTに関連して海運と港湾の連携の在り方」「パリ協定に関するアメリカの動きに関連したIMOの動き」「SOx規制に関連して規制海域の拡大や東アジアでの新たな海域設定の動き」「GHG関連で経済インセンティブの動きがIMOで協議される場合の課題」など意見が出され活発な意見交換の場となりました。

  今回のコロキアムは、造船事業者、舶用事業者、海運事業者をはじめ地方自治体や運輸事業者で海事産業に関わりを持つ方々等95名が参加(当初70名予定)されましたが、参加された皆様には今後の取り組みなどに大変参考になる有意義なものとなりました。





観光 〜 過去・現在・未来
第61回

日時平成29年10月6日(金) 13:30 〜 15:30
場所ホテル セントコスモ
講師鹿児島県観光プロデューサー 古 木 圭 介 氏


              鹿児島の観光再生へ 中長期的な観光戦略と人材育成が必要
               −鹿児島県観光プロデューサー 古木圭介氏が講演−


 (公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成による「第61回九州運輸コロキアム」を、鹿児島県観光プロデューサー古木圭介氏を講師にお迎えし「観光 〜過去・現在・未来〜」をテーマに、平成29年10月6日(金)、鹿児島市において開催いたしました。

  最近の観光は、政府の外国人の訪日観光客増大に伴う経済効果を高める政策に力を入れており、当初の予想をはるかに上回る勢いでインバウンドが増加しています。しかし、将来の日本の観光がどうなるか未知数であり、特に少子化により人口減少が進む地方において「観光」への取り組みをどうするのかが大きな課題となっています。
  古木氏は50年あまり様々な形で観光に携わってきました。その中でも累積赤字20億を抱えた鹿児島サンロイヤルホテルを就任4年目から単年度黒字にした手腕は特質すべきものです。このような経験をもとに、鹿児島県の観光の再生へのヒントやビジョンなど、観光業や関連産業の方々の今後の取り組みの一助となるよう企画しました。

  まず、鹿児島県観光プロデューサーの役割として、鹿児島県内の観光実情と課題の調査、観光庁・鹿児島県・財界・議会などとの意見交換、鹿児島県PR・観光戦略部との意見交換、中長期の観光戦略の策定を行い、具体案を知事に提言するとともに、実働部隊としては鹿児島県観光連盟との戦術協議を進め実行、実現していくことの重要性を説明されました。
  さらに鹿児島の観光に取り組むにあたっての戦略や問題点が示されました。@短期的に「明治維新150周年」「NHK大河ドラマ「西郷どん」」の活用。A中期的に「奄美群島の国立公園世界自然遺産候補地、御楼門完成、国体開催の予定の活用。B長期的に鹿児島県を観光リゾート地と位置付けて各種戦略を構想し、実施していくため、国内・海外からの長期滞在者の受け入れ態勢を整える必要がある。Cそのために国内航空路線の拡充・国際航空路線の充実、大型船が寄港できる港の整備や離島の港の整備、観光列車の活用・公共交通の整備、ホテルなど宿泊施設への支援と整備の必要性を説明。

  また、鹿児島県観光のキーワードとして、@屋久島・奄美群島をはじめとする大自然、霧島山系の活用、桜島・錦江湾の活用、薩摩半島・大隅半島の再点検、北薩の魅力の発掘などの環境関連。Aお祭り文化や国際霧島音楽祭の推進、指宿なのはなマラソン、鹿児島マラソンなどスポーツ推進、鹿児島ユナイテッドなどプロスポーツチームのキャンプ支援などの文化関連。B温泉を活用したメディカルツーリズムやヘルスツールイズム、トレッキングやロングトレイル、ダイビング、フィシイング、ヨットなど海に関するスポーツなどの観光関連や屋久島・奄美・錦江湾を活用したクルーズ船など新たな観光目線での紹介がありました。
  しかし鹿児島の観光戦略は、広報、営業、時間、人員、旅行会社からの支援要求などで膨大化する経費、少子化に伴う人口減少による教育旅行の減少等の問題を抱えている。このため少数経営型組織、PR経費の削減、マスコミの活用などによる営業経費の削減。世界の有名観光地や「ななつ星in九州」「ゆふいんの森」のように富裕層をターゲットにし、顧客競争率を高める。現況の「買い手市場」から「売り手市場」へと変えていく必要があり、日本一輝く観光地にするため「鹿児島リゾ―ト化構想」が必要との考えが示されました。

  最後に、鹿児島の観光は昔の資源に頼っており、それを動かす人材も少なく、さらに資源と人材の活用の歯車がかみ合っていない。そうした中で鹿児島が一流の観光リゾートを目指すには、夢となる目標をしっかり定めた中長期的な観光戦略、基礎となる資源の再発掘や視野の広いリーダーをつくる人材育成、さらに国際化への対応や情報化への対応が重要であり、そのために行政、業界など関係者と一体となって取り組むことの必要性を提言されました。

  講演後の討議(意見交換)においては、参加されていた皆様から、「自分達で気づかない観光資源に視点をあてた考え方が素晴らしい、しっかり応援していきたい」、「分野は違うがスポーツ観光など一緒に取り組めることも分かったので一緒に取り組みたい」など意見が出され活発な意見交換の場となりました。
  今回のコロキアムは、観光業者、観光関連事業者をはじめ地方自治体や運輸事業者で観光に関わりを持つ方々等約80名が参加(当初70名予定)されましたが、参加された皆様には今後の取り組みなどに大変参考になる有意義なものとなりました。





内航海運の活性化に向けて 内航未来創造プラン〜たくましく 日本を支え 進化する〜
第60回

日時平成29年9月4日(月) 13:30〜15:30
場所ハイアット・リージェンシー・福岡
講師国土交通省 海事局 内航課長 飯 塚 秋 成 氏


                たくましく日本を支え進化する「内航未来創造プラン」
                −国土交通省海事局内航課長 飯塚秋成氏が講演−

 (公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成による「第60回九州運輸コロキアム」を、国土交通省海事局内航課長の飯塚秋成氏を講師にお迎えし「内航海運の活性化に向けて 内航未来創造プラン〜たくましく 日本を支え 進化する〜」をテーマに、平成29年9月4日(月)、福岡市において開催いたしました。

  内航海運業界は、船舶や船員の高齢化、事業者の大半が脆弱な中小事業者など多くの課題を抱えていることから、国土交通省では昨年4月に内航海運事業者、荷主団体、学識経験者などで構成する「内航海運の活性化に向けた今後の方向性検討会」を発足し、1年3月をかけ検討が進められ、今後概ね10年後を見据えた内航海運が目指すべき将来像として、「内航未来創造プラン 〜たくましく 日本を支え 進化する〜 」としてとりまとめ、本年6月30日に公表されたことから、内航海運業をはじめ多くの海事産業に携わっている方々の今後の取り組みの一助となるよう企画しました。

  今回の講演では、@我が国の国民生活や経済活動を支える基幹的輸送インフラであり、減少傾向にあった輸送量は近年わずかながら上昇傾向にある。A産業構造は荷主企業−オペレーター−オーナーの専属化・系列化が固定化し、事業者の99.6%は中小企業で事業基盤は脆弱である。B「船舶の高齢化」「船員の高齢化」の「2つの高齢化」という構造的課題がある。CCO2削減等の観点から、更なるモーダルシフトの推進が求められている。といった内航海運の現状・課題が報告されました。
  次に、こうした状況を踏まえ、国土交通省が昨年4月に内航海運事業者、荷主団体、学識経験者などで構成する「内航海運の活性化に向けた今後の方向性検討会」を発足し、1年3月をかけて検討を進め、今後概ね10年後を見据えた内航海運が目指すべき将来像として「安定的輸送の確保」、「生産性向上」の2点を軸として位置付け、その実現に向け、「内航海運事業者の事業基盤の強化」、「先進的な船舶等の開発・普及」、「船員の安定的かつ効果的な確保・育成」「その他の課題への対応」について具体的施策が盛り込まれた「内航未来創造プラン 〜たくましく 日本を支え 進化する〜 」を本年6月30日に公表したことが報告されました。

  最後に、内航海運業の将来像の実現のための具体的施策の説明では、
「内航海運事業者の事業基盤の強化施策」として、
@船舶管理会社を登録することにより、登録会社の統一的管理・評価が可能となり、事業基盤強化に有効として、平成30年度より運用開始予定の「船舶管理会社登録制度の創設」について早急に検討を進める。
A荷主、内航事業者双方への要望や共通の課題などの情報共有を図り、それぞれの事業者の取組や行政施策へ反映するための「安定・効率輸送協議会(仮称)」の設置。
B関係者の連携の強化を図り、具体的な取組の推進等を実施するため「海運モーダルシフト推進協議会(仮称)」を設置し、モーダルシフト船の運航情報等一括検索システムの構築・実証実験や先進的取組等に対する表彰制度を行う。

「先進的な船舶等の開発・普及施策」として、
@操船支援・自動化、機関故障の予知・予防、荷役等の船内業務の省力化等を実現するトータルなシステムとしての自動運航船の実用化を目指す。
A船舶管理登録事業者の管理船舶や労働環境改善船(仮称)、IOTを活用した先進船舶に対する金利低額措置等の優遇措置の導入を検討し、円滑な代替建造の支援を行う。
B省エネルギー効果、費用対効果を「見える化」することにより、省エネ投資の促進につなげる、内航船「省エネ格付け」制度を創設し、普及に努める。

「船員の安定的・効果的な確保・育成施策」として、
@専門教育の重点化、リソースの効率的・効果的活用、船員養成に関わるステークホルダー間の連携強化を図るため、船員教育体制の抜本的改革の取組を年内を目途にとりまとめる。
A499総トン以下の船舶における船員の確保・育成策として、499総トン以下の貨物船の居住区拡大による500総トン超えに対する安全基準の緩和の検討を進める。
 
「その他の課題への対応」として、
@内航海運暫定措置事業の関係では、借入金の弁済が順調に進み平成35年度より前倒しで終了する可能性もあり得ることから、具体的な影響、事業者の意見等を把握し、課題や国の対応について検討する。
A燃料油の硫黄分の濃度規制への対応として、「燃料油環境規制対応方策検討会議」「燃料油  環境規制対応連絡調整会議」で検討を進め、検討結果を踏まえ関係者が連携しつつ規制の円滑な実施に向けた必要な対応方策を推進する。
といった内容が紹介され、この施策を推進するため行政、業界など関係者が一体となって取り組んでいくことが表明されました。

  講演後の討議(意見交換)においては、参加されていた皆様から、「具体的な施策については、一定期間での評価などフォローアップが大切」「現在取り組まれている船員確保策を引続き推進して行くことが必要」「船舶管理会社の登録制度を十分に機能させるためには何らかの法的支援策が必要」など意見が出され活発な意見交換の場となりました。

  今回のコロキアムは、内航海運事業者、造船事業者、港湾運送事業者をはじめとする多くの海事産業事業者に加えトラック事業者、地方自治体などの交通事業に関りを持つ方々等約130名が参加(当初70名予定)されましたが、参加された皆様には今後の取組みなどに大変参考になる非常に有意義かつ貴重なものとなりました。





熊本地震から1年 〜九州の観光復興〜
第回

日時平成29年4月18日(火) 13:30〜17:00
場所福岡市 ソラリア西鉄ホテル
講師【第1部】@国土交通省九州運輸局観光部長 伊地知英己氏
      A東海大学観光学部観光学科講師 栗原  剛氏
      B日本通運(株)業務部長       山本 慎二氏  
【第2部】パネルディスカッション
    コーディネーター (一財)運輸総合研究所所長     山内 弘隆氏
    パ ネ リ ス ト    敬愛大学国際学部教授       廻  洋子氏
                (公財)九州経済調査協会理事長 木 直人氏
                九州旅客鉄道(株)常務取締役   後藤 靖子氏
                阿蘇内牧温泉蘇山郷館主      永田 祐介氏
                国土交通省九州地方整備局港湾空港部長 堀田  治氏
                国土交通省九州運輸局観光部長 伊地知英己氏


                   熊本地震から1年 九州の観光復興に向けて
                     〜九州運輸セミナーを開催しました〜

 (公財)九州運輸振興センターと(一財)運輸総合研究所は、日本財団の支援と助成により、4月18日、福岡市において両財団共催による「九州運輸セミナー」を開催致しました。両財団による九州での開催は、2014年3月に開催以来今回で3回目の開催となりました。
 
  昨年4月に発生した熊本地震は、熊本市を中心に甚大な被害を及ぼしましたが、観光においては風評被害も加わり熊本を中心に九州全域で観光客が激減するなど大きな影響がありました。
  震災復興に向けては、行政を始め多くの関係者の方々が積極的に取り組まれているところですが、本セミナーにおいてもその一助となるよう、観光の面から震災復興に向けて関係者の議論を深めることを目的として「熊本地震から1年〜九州の観光復興〜」をテーマに開催することにしたものです。

(講演概要等)
  講演等に先立ち、佐々木良九州運輸局長より、挨拶に代えて「頑張ろう!九州には無限の可能性と挑戦がある」と題して、九州のさらなる外国人観光客等誘致のためには利用しやすくするための交通機関毎に抱えるハード・ソフトの課題克服が必要であり、また、九州各県には他の地域にはない素晴らしい観光資源があるので、外国人目線でさらに磨きをかけることが重要であると等の話がありました。

  第1部の講演では、伊地知英己九州運輸局観光部長から熊本地震後の熊本を中心とした九州の宿泊者数等が大きく減少した現状やこれに対する観光復興に向けた総合支援プログラムや九州ふっこう割等の支援策等の実施、その成果等、さらには災害後の課題であった外国人旅行者に対する対応マニュアルを作成したこととその内容等について、また、栗原剛東海大学観光学部講師からは、災害時の観光客対応の在り方等について検討を進めるために調査した全国各地の災害時の対応状況の事例等を交えて、研究報告と今後災害時の対応は如何にあるべきか等について、さらに、山本慎二日本通運(株)業務部長から熊本地震が発生した後の災害支援物資対策の実情と取組みこれを踏まえた災害時における課題、今後どのような対応が必要か等について講演されました。
 
  第2部では第1部の講演を踏まえて、山内弘隆運輸総合研究所長(一橋大学教授)がコーディネーターを務めるパネルディスカッションが行われました。
  ここでは、パネリストである、廻洋子敬愛大学教授より全国的な視点から九州の観光への取り組みへの考察等について、木直人(公財)九州経済調査協会理事長より九州広域の視点での官民連携した地震後の復旧・復興への積極的な対応・今後の取り組み等について、後藤靖子JR九州常務取締役より同社の被災後の地域と連携した観光復興・今後の取り組み組みなどについて、永田祐介阿蘇内牧温泉蘇山郷館主より被災された旅館の館主の立場で地震直後からの取り組み、また、その後の復旧・復興への積極的な対応などについて、堀田治九州地方整備局港湾空港部長より地震後のクルーズ船による支援イベント、今後のクルーズ船の寄港動向、クルーズ人口の推移、新造クルーズ船情報官民連携による国際クルーズ拠点整備等クルーズによる観光への効果などについて、伊地知英己九州運輸局観光部長より被災地における情報発信の重要性、特に被災の現状は正確に報道することと併せ、被災していない地域まで被災したように受け止められないような積極的な情報発信の重要性などについて発言されるなど、パネリストのそれぞれの立場で熊本を始め今後の九州観光の復興に貴重な発言がありました。
 
  今回のセミナーには当初予定の200名の1.5倍の300名の参加者があった大変盛況なものであり、かつ、内容についても参加された皆様を始め関係者から「内容が充実しており大変良かった。今後の参考になる。」等の声が多く聞かれました。





九州地方の自然災害と防災 〜激甚化する自然災害から命を守る〜
第59回

日時平成28年9月5日
場所ホテルセントラーザ博多
講師気象庁 福岡管区気象台長 横 山 博 文 氏


                第59回九州運輸コロキアムで福岡管区気象台長横山博文氏が講演
                      〜激甚化する自然災害から命を守るために〜
                         
 (公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成による「第59回九州運輸コロキアム」を気象庁福岡管区気象台長 横山博文氏を講師にお迎えし、「九州地方の自然災害と防災〜激甚化する自然災害から命を守る〜」をテーマに、平成28年9月5日(月)福岡市において開催いたしました。

  近年、全国各地でこれまで経験したことのない短時間・局地での豪雨や竜巻、また、地震が多発するという傾向にあり、これらによって甚大な自然災害も発生しています。
  九州においても例外ではなく「平成24年7月九州北部豪雨」をはじめ気象現象が局地化・集中化、災害の激甚化という傾向が見られ、また、「平成28年熊本地震」では甚大な地震災害も発生し、さらには、活発な活動を続けている桜島を始め多くの活火山があるなどの環境にあり、これらの自然災害に対するリスクは少なくありません。
  本コロキアムでは、最近のこのような激甚化する自然災害の傾向やその備えがどのようにあるべきかなどを講演頂き行政や運輸観光事業者を始め多くの関係者の方々の今後の防災・減災等の一助となるよう企画いたしました。
  なお、今回のコロキアムは、先の理事会で九州運輸コロキアム等実行委員長に就任した大黒伊勢夫理事(西日本鉄道(株)取締役常任監査等委員:元九州運輸局長)が、主催者挨拶をし、コロキアム終盤の討議の場では司会進行を務めました。

  講演では、導入で、最近の異常気象状況について、今年の北部九州の夏の記録的な高温・少雨・多照を例に挙げ、その原因が大気全体の温度が高く偏西風が中国大陸北部や太平洋上空で蛇行し、チベット高気圧と太平洋高気圧が強まったこと等が要因であるとその解説、紹介が行われ、近年、このような従来にない、いわゆる異常気象が多発しこれに伴う大きな災害も発生しているが、その災害から身を守るためには、@正しい知識を身に付けること、A日頃からの備えを怠らないこと、Bいざという時に適切に行動することが災害から命を守る上で必要となると述べられました。
  その上で、上記@〜Bを実行するために具体的な内容として、@風水害等の気象、A火山、B地震に分け、その状況と対策、また、日頃の備え等について説明等が行われました。

  @の気象状況については、近年の九州における主な気象災害の内容、九州は、全国から見て降水量が多いこと、全国の傾向と同様九州においても年平均気温偏差や集中豪雨が右肩上がりの傾向にあること、このような気象状況の下で気象庁が発表する防災情報(気象に関する特別警報、雨に関する注意・警報等、土砂災害警戒情報、高温注意情報、竜巻注意情報)の内容等を説明するとともにこれらを正しく理解することが重要であると述べられました。
  Aの火山については、九州の活火山を中心に全国の活火山の状況及び噴火警戒レベルと警報の関係、また、火山防災・減災のために行われている監視状況や監視機器、噴火警報等について説明等がありました。
  Bの地震については、地震が起きる原因となる地球上のプレートの位置、これを反映した地震の発生状況、特に九州、今般発生した熊本地震の特徴等を説明したうえで、地震と地震により発生する津波のメカニズムやこれらに備えるための地震警報や津波警報を正しく理解し、地震等が発生した場合にはどうするかを予め家族で話し合っておくこと等日頃からの備えと家族の絆が命を守ることに繋がると述べられました。

  以上の状況や対応等を踏まえた上で、日頃の備えとして以下のとおり述べられました。
・家の近くの危険な場所の把握(危険区の立て看板等)、家の近くの避難場所の確認と避難場所への道順の設定、気象情報等のテレビ等での情報収集と避難観光等が出された場合の早めの避難を行うこと
・普段からの備えの再確認(家族との連絡方法、避難場所の確認、家具などの耐震固定、非常持ち出し品の準備、家の耐震補強)が必要であること。
最後に
・九州は、大雨・台風の常襲地域、また、地震、火山も多いことから従来大丈夫であったから、今後も大丈夫との意識を持たないこと。
・正しい知識を身に付けること(津波は引きから始まるとは限らない、地震の際には無理に火を消さずに身の安全確保等)
・怖いで終わらせず、日頃からの備えをしておくこと
を強調されたうえで、「今からできることを始めよう、家庭の防災」とのフレーズで締めくくられました。

  当日は、台風12号が接近しその影響が心配される気象状況にあったにも拘らず、最近の異常気象等への関心が高いことを反映し、当初参加予定の70名を大きく上回る100名の方の参加がありました。





わが国観光施策の現状と今後の取組み 
 〜 観光をわが国の基幹産業へ 〜
第58回

日時平成28年6月6日
場所ハイアット・リージェンシー・福岡
講師観光庁 次長 蝦 名 邦 晴 氏


                   観光大国に向けて −観光を我が国の基幹産業へ−
               〜第58回九州運輸コロキアムで観光庁次長蝦名邦晴氏が講演〜


 (公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成による「第58回九州運輸コロキアム」を、観光庁次長蝦名邦晴氏を講師にお迎えし「わが国観光施策の現状と今後の取組み−観光をわが国の基幹産業へ−」をテーマに、平成28年6月6日(月)、福岡市において開催いたしました。

  わが国は今後人口減少・少子高齢化の進展により、経済の縮小、特に地域においてはその影響が大きくなるものと懸念されています。このような中、観光はすそ野が広く多くの産業に経済効果と多くの雇用を生み出すものであり、わが国経済の活性化の大きな柱として、また、地方創生の切り札として、国を始め官民挙げて観光の振興に取り組まれているところです。本年3月末には、安倍晋三内閣総理大臣を議長とした「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」において「明日の日本を支える観光ビジョン」が策定され、政府一丸となって、また、官民が一体となって観光先進国への取り組みも行われているところであり、観光先進国である九州において観光振興や地域振興・活性化に取り組まれている方々の今後の取り組みの一助となるよう企画いたしました。

  今回の講演では、始めに観光立国の意義は、成長戦略の柱、地域発展の鍵、国際社会での日本のパワー、自らの文化・地域への誇りであるが、わが国の社会・経済の中で観光の持つ重みが大きく変化しており、以前に比べその意義は随分変わってきていること等を説明し、現在の観光の重要性に触れたうえで、観光を取巻く現状として、今後の世界の観光市場は2030年に18億人と2010年の約2倍に増加するが、その伸び率はアジアが高いことが予測されており、地理的に優位なわが国はこれらの需要を取り込み、世界の観光大国に比肩するようになることが必要であることや、外国人旅行者数が世界1位のフランスは1,000キロメートル以内にある諸外国が8割以上を占めているが、日本は1,000キロ以内ということで見れば韓国が入ることくらいであり、日本は欧米に比べ地理的な不利状況にある。これを克服し、訪日外国人を拡大させるためには、中国を中心に、経済発展の著しい東南アジア、東アジアの国々等域外からの誘致が重要であるなど観光を取巻く現状とその課題等について述べられました。

  また、訪日外国人数が増加することは大事なことであるが、観光の意義の本質は「観光による消費」であり、これをどのようにしていくかということが議論になる。昨年の訪日外国人旅行消費額3.5兆円のうち、中国が約4割と、加えて、中国以外のアジアからの観光客による消費の割合も大きいことから、今後これらの国、地域からの消費がポイントになる。また、これらの国々の消費の内容をみると「買い物」のウエイトが高くなっているが、他方、欧米系は宿泊・飲食のウエイトが高くなっている。今後のインバウンド戦略を進める上では、このような消費行動を踏まえることも必要である。インバウンドを輸出産業として見た場合、3.5兆円という消費額を輸出額としてみると、わが国第5位の自動車部品に相当し、‘20年の目標である8兆円となると化学薬品に比肩することとなり、自動車産業に次ぐ大輸出産業になると期待され、今後のわが国輸出産業の重要な一角となるものであることなど外国人観光客増加による経済効果について述べられました。

  その上で、観光立国の実現に向けた政府のこれまでの取組み状況と、本年3月に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」、本年5月に決定された「アクションプログラム」について紹介されましたが、これらについては、ビジョンは方向性を3つの視点に分け10の改革項目について整理されていること、また、ビジョンではこれまでの「観光立国」ではなく「観光先進国」という言葉を用いているのは欧米系の観光大国に並んでいこう意味を含めていることを説明されました。
 
  最後に、熊本地震により、大きな被害を直接受けている熊本県、大分県を始め予約キャンセル等により間接的な被害を受けている九州各県の旅館・ホテル等について、5月末に策定された「九州の観光復興に向けての総合支援プログラム」により、応急的取組、当面の観光需要回復に向けた短期的対応、より魅力的な観光地域としての復興・発展を支援する中長期的対応について説明があるとともに、政府一丸となって取り組むこととしていることを表明されました。
  講演後の討議(意見交換)では、参加されていた観光カリスマの鶴田浩一郎氏、(日本旅館協会九州支部連合会会長、ホテルニューツルタ社長)とビジットジャパン大使の町孝氏(JR九州ビルマネジメント株式会社社長)から意見が出され活発な意見交換の場となりました。

  今回のコロキアムは、地方自治体の観光振興担当部所、旅行業者、ホテル事業者、バス事業者、鉄道事業者、タクシー事業者、航空事業者など地方自治体や観光・交通事業に関係される方々等約100名が参加(70名予定)されましたが、参加された皆様には今後の取組みなどに大変参考になる非常に有意義かつ貴重なものとなりました。
  なお、会場では、前回のコロキアムと同様、参加者の方から、熊本を中心に発生した地震により被災された皆さまへ支援される日本財団設置の募金箱に募金を頂きました。





地域公共交通の現状と今後の課題 〜公共交通が地域活性化を支える〜
第57回

日時平成28年5月9日
場所ハイアット・リージェンシー・福岡
講師国土交通省 総合政策局 公共交通政策部長 蒲 生 篤 実 氏


                         地域公共交通の現状と今後の課題
                         −公共交通が地域活性化を支える−

 (公財)九州運輸振興センターでは、日本財団の支援と助成による「第57回九州運輸コロキアム」を、国土交通省総合政策局公共交通政策部長の蒲生篤実氏を講師にお迎えし、「地域公共交通の現状と今後の課題−公共交通が地域活性化を支える−」をテーマに、平成28年5月9日(月)、福岡市において開催いたしました。

  わが国では、モータリゼーションの進展等に反比例し公共交通の輸送人員が大きく減少している状況や今後の急激な人口減少が予測されている中で、公共交通をめぐる環境はますます厳しくなることが想定されており、このような状況の下、高齢化の進展や人口減少が急激に進む地方においては、地域住民の足として、また、地域活性化などに極めて重要な役割を果たす地域公共交通の活性化・再生が強く求められています。
  このため、国では、平成19年に地域公共交通の活性化及び再生に関する法律や平成25年に交通基本法等を制定・施行するとともにこれに基づく施策や予算措置など、地域公共交通活性化・再生のための法律や制度が創設、拡充されており、国・地方自治体等が連携、協力しながら地域公共交通活性化・再生の取り組みが積極的に行われているところであり、本コロキアムは、今後のこのような取り組みの一助となるよう企画いたしました。

  今回の講演では、先ず公共交通による輸送人員が大きく減少している状況、今後の高齢化と人口減少の予測、交通事業者の厳しい経営状況等を示し、これが負のスパイラルに陥っている状況にあり、地域公共交通を取り巻く環境はますます厳しくなることを説明したうえで、地域公共交通の確保・再生は、極めて重要な政策課題であることから、平成19年に地域公共交通の活性化及び再生に関する法律が施行され、さらには平成25年に交通基本法が施行されるなど、これらの法律や制度などにより総合的かつ効果的な地域公共交通活性化・再生への取り組みが行われてきたこと、その結果、これらの法律や制度を活用して積極的に取り組む市町村が増え、地域公共交通網形成計画や地域公共交通再編計画が策定されており、当初目的数以上の計画が策定又は策定予定されており、予想以上の効果的な運用が始まっている実態があることを話されるとともにその制度の活用事例等を紹介されました。

  次いで、公共交通の利便性向上等が生産性を向上させ地域の活性化に寄与することやその事例などを紹介するとともに拡大しているインバウンド観光の状況とこれを公共交通に結び付ける取組み活動の重要性等について話をされました。

  最後に、今後の公共交通活性化に向けては、現在の施策とこれに基づく取り組みの成果があらわれ始め、人口が減少している中にあっても公共交通機関の輸送人員が増加する地域が見られるようになってきているうえに、今後、高齢者が増加する中で自家用車から公共交通機関へのシフトが加速し、さらに輸送人員が増加することが見込まれることなどから公共交通の維持・活性化に明るい展望が開けている。他方、公共交通機関のない地域での高齢者の足の確保やバス運転手の不足が深刻になっているなどの課題や問題があるので、今後は、これらの課題や問題への適切な対応が重要になっている等の説明があった。今後は定着した公共交通活性化・再生関連等法律やこれに基づく制度を如何に実践するかが今後の重要な課題であると締めくくられました。

  今回のコロキアムは、地方自治体の公共交通活性化・再生に取り組まれている方やバス事業者、鉄道事業者、タクシー事業者など公共交通に関係される方々が約120名参加(70名予定)されましたが、参加された皆様には今後の取り組みなどに大変参考になる非常に有意義かつ貴重なものとなりました。
  なお、会場では参加者の方から、熊本を中心に発生した地震により被災された皆さまへ支援される日本財団設置の募金箱に募金を頂きました。







このページのトップへ